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僕の恋人の長谷部くんは困った事にちょっとMっ気がある。いや、この際オブラートに包んでも仕方がない。Mだ。彼は罵られたり甚振られたりする事に快感を覚える変態だ。
長谷部くんが普通のプレイでは物足りないと衝撃の告白をしてきてから数ヶ月が経った。僕は彼に付き合わされて順調にアブノーマルの道、どころか崖を転げ落ちていた。未だ底が見える気配はない。
念の為言っておくと、僕はそんな長谷部くんが嫌いではない。どんなに前の主を拗らせていようが性癖を拗らせていようが、僕は長谷部くんを愛していると断言できる。
戦場では鬼神のごとき活躍を見せ、普段の生活においては自分にも他人にも厳しい模範的優等生でパーフェクト近侍な長谷部くんが、僕の前でだけそういった面を見せてくれるという事は信頼と愛情の証だと思っている。僕の趣味では断じてないけれど、涙目で僕の爪先に頬ずりをして足の指に一本一本舌を這わせたり、快感で回らない舌で「みちゅたや」と名前を呼んで僕に懇願してくる長谷部くんは、うん、国宝尊いよねってなる。長谷部くんは何をしていても綺麗で可愛いので仕方ない。僕に加虐趣味はない。ない筈である。全て長谷部くんがあらゆる面において魅力的すぎるのが悪い。
そんな訳で僕は彼の提案する変態的なプレイを渋々受け入れたり、時には却下したりしつつ、最近はなんだかんだ折り合いをつけてうまくやっていた。
そんなある日の事。
「光忠、聞いてくれ」
僕は嫌な予感がして笑顔が引き攣るのを感じた。予感というか既視感、既に何度か経験したやり取りだった。
「…………一体何かな、長谷部くん」
僕と長谷部くん共同の私室の中、二人とも入浴を済ませ、寝巻き代わりの着流しを着て、畳には布団を敷いて、あとはもう寝るだけ、という状況での提案である。しかも長谷部くんはフリスビーを咥えて遊びに誘ってくる犬のようなわくわくとした顔をしている。
ここ数ヶ月、こんな風に話を切り出される時は決まって長谷部くんが新しいプレイを提案してくる時だった。つい先日も似たようなシチュエーションで、いつのまにやら購入したらしいブジーのセットを手に「先っぽだけ! 先っぽだけでいいから!」 と尿道責めを提案されたりした。もちろん却下した。
「先日、何かプレイの参考になるものはないかと資料を取り寄せてみたんだが……おまえにも少し見て欲しくてな」
長谷部くんは向上心が強く、常に努力を怠らない素敵な刀だ。僕は彼の外面的な部分だけでなく、その精神性にも惚れ込んでいる。
でもそういう研究熱心さは戦術の改善とか新しい献立の開発とかそういう面においてのみ発揮されるべきで、どんな体位がいいとかどんなプレイがいいとか、そういう倒錯的な方向には活かされないで欲しかった。
「……資料?」
首をひねる僕の前に、長谷部くんが鍵付きの戸棚(彼はここによく購入したアダルトグッズをしまっている)から透明なケースを取り出してくる。なかには薄い冊子のようなものが何冊も詰められていて、長谷部くんはその中の一冊を抜き取って僕に手渡してきた。
「なんだい、これ」
「エロ同人だ」
「エロ同人?」
「個人の淫猥な妄想を絵や文章にした書物だ」
要するに春画……当世風に言うならばエロ本の一種らしい。
渋々受け取って表紙を見れば、どことなくいやらしい表情を浮かべた主人公らしき人物の絵が描いてある。何の気なしにひっくり返して裏表紙を見る、表紙とまったく同じ構図で裸になった主人公がどろどろの精液まみれになっていた。
僕はそっと表紙を表に返した。
「まあ読め」
仕方なく僕は差し出されるままに何冊か本を受け取り、無言でページを捲る。
およそ人体から出ると思えない量の体液に塗れた女体や男体、「頭大丈夫?」と言いたくなるような奇想天外なシチュエーションや台詞に突っ込むのは、まあ野暮というものだろう。創作物だし。ああでも、この体位なんかは多少参考になるかも――って何を考えてるんだ僕は。
一通り本に目を通し終わると、僕はぱたりと本を閉じて積み上がった本の山の一番上に乗せ、ずずず、とできるだけ遠くに押しやった。
今から要求される事は九割九分九厘予想できている。それでも僕は聞かずにはいられなかった。
「…………一応読んだけどどうすればいいのかな」
「俺に乱暴しろ。エロ同人みたいに。エロ同人みたいに!」
「ちょっと待って。触手物とかあったよ!? 正気?」
資料用に渡されたエロ同人誌の中には触手物とか混ざっていたが、こんなの要求されたって困る。たしかに僕達は人外の存在だけど基本形は人型だし、それ以外にはなれない。もし万が一なれたんだとしても触手生えてる系男士とか絶対にかっこよくないから嫌だ。そんな冒涜的な存在になるくらいだったら一D一◯/一D一〇〇のSANチェック失敗からの最大値出してとっととロストしたい。
長谷部くんの過激で突飛な発言のせいで僕のSAN値は常にピンチである。
「いや、触手プレイもやぶさかではないんだが……今回重視したいのはそういう方向ではなくってだな」
「そこはやぶさかであってくれよ……」
僕のツッコミを全力スルーした長谷部くんは、こんな状況でなければ思わず見惚れてまうような凛々しい表情で口を開いた。
「俺は数あるエロ同人を読んで、俺達に足りないものに気づいた」
「ろくでもない予感しかしないけど、なんだい?」
「俺達には、淫語が足りないんじゃないだろうか」
「淫語」
「ハートマークとか、もっとつけたほうがいいんじゃないか?」
「ハートマーク」
僕は痛みを訴える頭をおさえながら、先程遠ざけたばかりのエロ同人誌を手にとって適当なページを開いた。
「……ええと、それはたとえばここにある……そうだな、……『おちんぽじゅぽじゅぽらめぇ♡♡』みたいな?」
読むのにちょっと躊躇するくらいには頭のおかしい台詞だったが、長谷部くんは普通に真顔で返してきた。
「そうだ。『俺の子宮に光忠の特濃ザーメンミルク種付けしてっ♡』とかだ」
「直腸の奥に子宮なんてないだろう?」
「そこは様式美だ。わかれ」
「わかりたくないなぁ……」
「そういう、下品でいやらしくて馬鹿みたいな事言ってるの、興奮しないか」
「いや、まったく」
あっさりと否定する僕の様子を見て、長谷部くんは不服そうに口をへの字に曲げた。子供っぽくて可愛い仕草だけど、そんな風にされたところで思わないものはどうしようもない。
もしもいきなり長谷部くんが行為中に『おちんぽ』だとか『種付けセックス』だとかのイカれた単語を口にするようになったら、僕はまず長谷部くんの心配をするだろう。頭の。
まだ宵の口のこの時間、淫語の使用の是非について論じるこの空間は、エロスというよりカオスな空気に包まれている。おそらく長谷部くんは真剣なんだろう。真剣に、淫語の是非について考えている。その状況がまた非常にシュールだった。
僕は静かに首を横に振った。そろそろ頭痛薬が必要かもしれない。
「……とにかく、淫語とかそういうのは却下させてくれないか」
「一体何が不満なんだ」
「強いて言うなら全部かな?」
いつもなら僕が却下すると言えば引き下がるのに、今日の長谷部くんは珍しく食い下がる素振りを見せてきた。しばらく腕組みをして何事か考えた後、はっとした様子で顔を上げる。
「じゃあ『光忠のやや子孕ませて♡♡♡』とか言うのはどうだ?」
「…………は?」
あまりのぶっ飛んだ発言に思考が追いつかず、一瞬目が点になった。
「駄目か? なら『んほおお♡みちゅただちんぽでメスイキきめましゅ♡♡♡』とか……」
「い、いやいやいや! え、急に何? 何なの? 怖いよ!」
「おまえがどんな淫語なら気に入るかと思ってな。もっとソフトな言い回しが好みか? 『はしぇべの勃起乳首ちゅうして♡』とかはどうだ? いやこれソフトなのかなあ。もう少しこう……」
「待って! なんでそう次から次にそんな台詞出てくるの君。なんでそういう謎の才能発揮しちゃうの?」
ツッコミつつも、内心このままではまずいと僕は冷や汗をかいた。
正直に言えば、こうして実際長谷部くんの声を聞いてシチュエーションを想像してみたらちょっとだけ興奮しないでもなかった。特に三番めの発言は結構アリだった。いきなり言われるのは心の準備的に困るが、最初からそういうプレイだと割り切ってれば案外イケるかもしれない。
でもここで認めちゃったら色々と負けな気がする。たとえ既に手遅れだとしても、僕はまだ気持ちだけでもノーマルな世界に留まっていたい。
そんな僕の気持ちをわかっているのかいないのか、長谷部くんはむう、と唇を尖らせた。可愛い。いや違うそうじゃないだろ僕。
「強情な奴め。おまえは俺が両手で尻を広げて『はしぇべのとろとろケツマンコ、みちゅただ専用のメス穴に躾けてください♡♡♡』とか言っても興奮しないのか? ん?」
――――それはちょっとキた。
敗北感で畳に両手をつけてうなだれる僕の背中を長谷部くんが慈愛に満ちた眼差しでぽんぽんと叩いてきた。
「安心しろ、光忠。俺にはわかってる。おまえが実はそういうの好きだって、ちゃんとわかってるからな」
「…………やめてくれないかな。僕はノーマルだから。あくまでも! ノーマルだから!」
「大丈夫大丈夫。やってみれば絶対気に入るから。だから、な?」
何が大丈夫なのか全然わからないし経験上絶対に大丈夫じゃない。
それでも長谷部くんが優しく微笑んで僕に触れてくるのは純粋に嬉しい。こんな状況でさえなければ抱きしめて顔中にキスの雨を降らせてあげたい。僕は元々そういう優しく穏やかなふれあいの方が好きなのに、本当にどうしてこうなった。えっちで変態な長谷部くんも嫌いじゃない……というか普通に好きだからいいんだけれど、未だに納得がいかない。
「光忠」
しかしあまりにも長谷部くんが推してくるものだから、僕はとうとう根負けして溜息をついた。
「……仕方ないな。一回だけなら、やってもいいよ」
「そうか。ありがとう」
嬉しそうに笑う長谷部くんは本当に可愛くて、ああやっぱり僕の恋人は最高だと再認識した。変態だけど。
苦笑して額に唇を落とすと、長谷部くんはくすぐったそうに首をすくめた。
「で、具体的にどうすればいいのかな」
「今からおまえは俺に淫語混じりの言葉責めをしつつ、いつものようにエロい事をしてくれればいい。そうしたら俺は淫語とハートマークで喘ぐから」
割とざっくりというか、ノープランに近い。長谷部くん、それは僕の淫語スペック(という言葉があるのか知らないけど)に頼りすぎじゃないのか。期待されてるなら出来る限り頑張るけど、多分僕にそんなものはない。
僕は先程エロ同人とやらを初めて読んだけど、あんな狂的な言葉の数々があれ程ぽんぽんと浮かんで口にできるのはある意味才能だと思う。快感で溶けた頭で『ザーメンみるくけつまんこにどぴゅどぴゅ種付けされてイッちゃう♡♡♡』とか咄嗟に言えるとはとても思えない。あれ口走ってる人達って、実は結構余裕があるんじゃないだろうか。
僕に責められながら、必死で淫語ボキャブラリーを働かせて喘ぐ長谷部くんを想像したらちょっと可愛かった。けれど、プレイの最中そんな風に余裕を持たれるのは、なんとなく面白くない。
長谷部くんは大人しく僕の与える快感や羞恥に翻弄されてればいいんだ。虚勢も余裕も余計なもの全部ひっぺがして、僕以外の事なんて何も考えられなくなるくらい身も世もなく喘がせてやりたい。
「光忠?」
呼ばれてはっと思考を戻す。
「……体調が悪いのか? 無理ならまた今度でも、」
「いや、大丈夫だよ」
だから、さっきから僕は何を考えているんだ!
僕はノーマルなんだ。長谷部くんが特殊プレイ好きな変態だから喜ばせる為にそういったプレイに付き合ってるだけで、僕自身は普通のプレイが好きなのだ。同性愛でも普通のプレイ(ただしアナルセックスは含む)がしたいんだ。
最近いい加減長谷部くんに毒されすぎてきている。この次は絶対に僕の好きな穏やかで甘々なプレイをしよう。
そう決意しながら、僕は未だ心配そうにする長谷部くんの頬に手を伸ばす。
いとしいいとしい、僕だけの恋刀。
彼の喜ぶ顔が見たいから、本来僕の好みじゃないプレイにだって全力で付き合ってあげたくなる。僕はそのくらいこのどうしようもなく性癖を拗らせている可愛い恋人に惚れているのである。
だから、そう、これは長谷部くんの望むプレイの為のロールプレイ。あくまでも演技なのであって、けして僕自身がノリノリで言っている訳ではないと、ここで一つ自己弁護しておく。
一度深呼吸して頭のスイッチを切り替え、僕は長谷部くんの頬から顎に指を滑らせ、掬うようにして上向ける。ここ数ヶ月の体験を経て不本意にも長谷部くんの好みは大体把握していた。僕はできるだけ酷薄そうに見えるように微笑んであげて、来る快楽の予感で早くもとろけている藤色の瞳を覗きこむ。
「それじゃあ長谷部くん、僕がぶち込みやすいように自分でおしりいじってくれる?」
「ひっっあ、あ、ふあっあ♡んんっ♡♡♡」
ハートマークつきの喘ぎってどうやるんだろうかと思っていたが、そこはさすが長谷部くんだった。いつもの三割増しくらい甘い声は、まさにハートマークつきの喘ぎと呼ぶにふさわしい響きである。
長谷部くんは現在、一糸纏わぬ姿で四つん這いになり、自らの指をお尻に深々と差し込んでいる。前の方は既に何度か達していて、太腿にはローションと体液の混ざった液体が斑になって垂れていた。
時折僕が背中や太ももに舌や指を這わすと、物欲しげに腰が揺らめくのがたまらない。
いろんな液体でてらてらと光るおしりを撫でてやりながら、後ろからかぷかぷと長谷部くんの耳を柔らかく食む。軟骨の形を確かめるようにこりこりした感触を口の中でなぞっていると、長谷部くんがひんひんと喘いで首を左右に振る。
「やっと三本入るようになったね。長谷部くんの中、今どうなってる?」
「んっ♡あ、あつくて、ぐねぐねしてるっ♡」
「本当?」
「ふあああっ♡♡♡入れちゃやだっ♡ひっ♡らめ、動かさなっ♡♡ひあっ♡♡」
長谷部くんが入れている指の隙間から強引に僕の指を中に入れてぐりぐりと掻き回すと、長谷部くんの腕からがくりと力が抜け、お尻だけを高く上げた体制になった。
「ああ、本当だ。すごくあついね。あつくてとろっとろで……ねえ、ここに太くて固いのぶち込まれたらもっと気持ちいいと思わない?」
「おも、うっ♡ん、はっ、みつただ、俺、もぉ……♡」
「じゃあ僕の舐めてくれる?」
下を寛げて僕のモノを顔の前に持って行ってやると、長谷部くんははあ、と頬を染めて溜息をついた。瞳もなんだかハートマークが見えるくらいトロンと蕩けている。危ない。幻覚が見えているぞ気をつけろ僕。内心冷や汗をかく僕をよそに、長谷部くんはとろとろになっただらしない顔であむ、と僕の股間にしゃぶりついてくる。
「長谷部くん、おいしい?」
「ん、おいひい……♡」
右手で自分の穴をいじりながら、左手を僕の竿に添えてじゅぽじゅぽと音を立てて吸い付いてくる長谷部くんは可愛い。この状況は不本意だけどとんでもなく可愛い。
長谷部くんの前はもうすっかり立ち上がってふるふると震えていて、先走りなんだか精液なんだかわらかない雫を次から次へと垂らしている。触りたくてしょうがないだろうに、それを堪えて僕のものに奉仕する姿は健気でいじらしい。
「みひゅひゃや、ひもひいい?」
「……う、んっ……いいよ、その調子」
そう言って頭を撫でると長谷部くんは気持ちよさそうに目を細める。肉棒を喉の方まで咥えながらも子供っぽい顔で笑うものだから、僕もちょっと余裕が削がれてきた。これは一度出しておいた方がいいかもしれない。
「っく……長谷部くん、出すよっ……」
長谷部くんの頭を掴んで、無理矢理(と言ってももちろん加減はしている)ガツガツと腰を使うと、長谷部くんはくぐもった悲鳴をあげてそれを受け入れる。こういう風に強引にされるのが長谷部くんの好みだという事はとっくにお見通しだ。低く呻いて長谷部くんの喉に種付けするように射精し、ずるりと己のものを引きぬいた。長谷部くんは口元を抑えながら何度か中のものを咀嚼して、満足気に飲み干す。
僕はそういうの全然、これっぽっちも趣味じゃないんだけれど、そういう行動はちょっとクるものがある。有り体に言って、えっちだ。
「……全部飲んだの?」
口を開くようにうながすと、長谷部くんはぱかりと口を開いて中をよく見えるようにしてくれる。確かに中には出したはずの僕の精液はなく、長谷部くんの舌だけが真珠色の歯の間で軟体生物のようにぬらぬらと光っていた。
「長谷部くんってばえっちで食いしん坊なんだから……下のお口にも欲しい?」
けしてここで下の口ってなんだとかツッコんではいけない。こういうプレイは勢いとムードが大事なのである。
「ほしいっ……くださいっ♡」
「まだ駄目。長谷部くんは下品でいやらしくて馬鹿みたいな事言って興奮する変態なんだもんね? ほら、もっとはしたない事いっぱい言ってみて?」
「あっう、ぁ、おれ、は……♡♡」
「せっかくだから俺、じゃなくて名前で言ってみようか」
「んん♡はせぇ、はしぇべは、みつたらのまえでおしりいじってきもちよくなっちゃう、淫乱な刀ですっ♡」
自分で自分を貶めるような言葉を言う度、長谷部くんの顔が蕩けていく。
「みつただのおちんぽ舐めて勃起しちゃう変態です♡みつただのおちんぽにざーめんみるくどぴゅどぴゅ♡ってしてほしくて、おれ、おれぇ♡♡♡」
長谷部くんが硬度を取り戻しつつある僕のものに頬ずりをする。それを見て僕は一つ思いついた事があった。
「ね、長谷部くん。あれ言ってよ。さっきの奴」
長谷部くんはぼんやりとした瞳で僕を見上げ、数秒かけて意味を理解すると、それはそれは淫蕩な笑みを浮かべて体勢を変えた。仰向けになって自分の太腿の裏から手を回し、両側から穴の縁に指をかけてゆっくりと左右に開く。
「はしぇべのとろとろケツマンコ、みちゅただ専用のメス穴に躾けてください♡♡♡」
よくできました。
「あああっ♡みつただのおっきいのはいってる♡♡ふああっ♡あっ♡はげしっ♡♡♡」
「激しいの好きだろう? ほらもっと腰振って」
「すきっ♡すきぃ♡♡♡あっ♡もっとぉ♡もっとじゅぽじゅぽしてぇっ♡♡♡」
長谷部くんの中は僕のモノを待ち望んでいたかのように熱く、奥へ奥へとうねって誘ってくるようだった。一回出してなければ危なかった。
僕が長谷部くんの腰を掴んでぐりぐりと腰を回すと、長谷部くんは仔犬のような悲鳴をあげてシーツに縋り付いた。長谷部くんのイイ所など全てお見通しである。
しかしシーツにばかり縋られているのも何か腹が立つので、僕はやんわりと長谷部くんの指をシーツから外し、代わりに自分の指を絡める。
「君は誰のもの?」
「ンンっ♡♡♡はしぇべはみちゅただ専用のっ♡肉便器でしゅ♡♡♡あっそこ♡そこらめっ♡♡奥っ奥、ほしっ♡♡♡」
焦らすように入り口の浅いところで抜き差ししてやると、長谷部くんはもどかしげに腰を揺らして自分からイイ所に当てようとしてくる。けれど僕はそれを避けるように動く。
「なんでえっ……」
「長谷部くん、僕にどうしてほしい? 前立腺のところごしごし擦って欲しい? 長谷部くんの奥の奥までずっこずっこ突いてほしい? それとも長谷部くんの可愛いおちんちんイかせてほしい?」
そう言って完全に動きを止めてやると、長谷部くんは呆然としつつも、どこかうっとりした顔で僕を見上げてくる。
「……前立腺、こすってぇ♡あっあっあっ♡♡ひゃあん♡もっと奥♡奥もずこずこってして♡はぁんっ♡♡みつただ、もっとぉ♡♡♡」
長谷部くんの両足が僕の腰に絡みつく。僕は長谷部くんに求められるまま奥へ奥へと侵入していく。長谷部くんが気持ちよさそうだと僕も嬉しい。
「奥気持ちいいの? じゃあおちんちんシコシコしなくてもいい?」
「や、やらっ♡ちんぽもっ♡奥も前立腺もちんぽも全部ほしっ♡♡♡ちょうだい、みつたらっ♡♡」
「『ちょうだい』、じゃなくて『ください』だろう?」
「ぜんぶっぜんぶください♡♡♡ふあっ♡♡♡あっあっんンッ♡♡♡」
「全部かあ。ふふ、長谷部くんはえっちだね」
腰の動きを止めずに先程からだらだらと涎をたらしている長谷部くんの前を掴んで少し乱暴に扱いてやると、中がきゅうきゅうと締まる。のけぞった拍子にさらされた白い喉が眩しくて、僕はそこに歯を立てる。手の中の長谷部くんが嬉しそうにびくびくと跳ねた。
「あああっ♡♡みつただ♡だめ、きもちい♡♡ちんぽもけつまんこもきもちよくて♡♡イッちゃ、イッちゃう♡♡♡」
長谷部くんは相変わらず淫語を口にしてはその卑猥さに自分から興奮して気持ちよくなっていいる。もう頭なんか快感でトロトロになってる癖に、必死になって馬鹿みたいにハートマークと淫語を乱舞させている。可愛い。状況はともかく、一生懸命な長谷部くんはとても可愛い。
だから僕も期待に応えるよう、長谷部くんの腰をがっしり掴み、肉と肉がぶつかってぱんっと音を立てるくらい深く深く長谷部くんの奥を狙う。ナカでぐちゅっと長谷部くんの入ってはいけない所を押し開いたのがわかった。
「――――♡♡♡やらっ♡やあっイク♡♡イッちゃう♡あンッああっ――――♡♡♡」
長谷部くんがびくびくと痙攣して、前から白濁のシャワーを降らせる。ぎゅうっと後ろが締まって持って行かれそうになるのをなんとか耐えていると、長谷部くんの体からふうっと力が抜けた。気絶してしまったらしい。
しかし僕は長谷部くんを休ませる気はなかった。だって長谷部くんは酷くすればする程気持ちいいって泣く変態なんだから、こんな一回限りの生温い責めで終わらせるわけにはいかないのだ。
ずっと触れていなかった長谷部くんの乳首に手を伸ばし、ぎゅうっと押しつぶしながらガツガツと腰を使うと、伏せられていた長谷部くんの瞼が開く。すぐに驚いて口を開いたけど、すぐにそこからは戸惑い混じりの嬌声が溢れ出してくる。
「っっッ! ひああっ!? あっゃ、みつた……?」
「長谷部くん、誰が気を遣っていいって言ったのかな?」
「んっあああっ、ふ、や、なんでっ!?」
長谷部くんは目を白黒させて僕を見上げる。状況を教えてあげる為にぱちゅんと奥を深く穿つと、長谷部くんは首を仰け反らせて悦んだ。
「あっんんんっあ、あっだめ、おく、奥はっ……!」
「さっきは奥に欲しいって言ってたのに、わがままだなあ」
「今はっ今は駄目っ……あっやらあっ……は、あっ、んンぅっっ」
「ほら、ハートマークつけて喘ぐんだろう? やらしい事もまだ言えるよね? おちんぽだけじゃなくてちゃんと頭の方にも血液回さないと」
そんな余裕をあげるつもりなんてないんだけど。
「やっ、にぎらなっ……あっ、ああっひんっ」
僕はぼろぼろと涙を流す長谷部くんの顔を覗き込んで優しく微笑む。嫌だな、長谷部くん、どうしてそんなに怯えた顔をするんだろう。本当はこういうのも好きなくせに。僕ちゃあんとわかってるんだからね?
長谷部くん、と目を合わせて名前を呼ぶ。ひくりと後口が収縮するのが僕にも伝わってくる。そんなに期待されたんじゃ、僕だって応えないわけにはいかないよね。涙で濡れた藤色の瞳をまっすぐに見据え、僕はにっこりと微笑んだ。
「がんばれ♡がんばれ♡」
僕は長谷部くんの眠る布団の脇で頭を抱えていた。
あの後長谷部くんが気絶する度に叩き起こして何度も中に吐き出し、ふと気づいた時には精液まみれで息も絶え絶えになった長谷部くんが僕の下で横たわっていた。
慌てて脈と呼吸で無事を確認し、ぐしゃぐしゃになった布団とシーツを新品の物に交換し、厨に行って水と湯とタオルを持ってばたばたと部屋に戻ってきたところだ。
温かいタオルで長谷部くんの体を拭いて服を着替えさせていると、煤色の睫毛がふるりと揺れた。
「…………みつただ?」
ざらりと掠れた声だった。
「のど、かわいた。みず」
「はい。飲める?」
背中に腕を入れて起き上がらせ、口元に水の入ったコップを持っていくと、こくこくと喉が上下する。よほど渇いていたのだろう。長谷部くんはコップの水をあっという間に飲みきって、はふ、と息をこぼした。
「もっと」
少しばかり潤いの戻った声でそう言われ、僕は黙って水差しから新しい水をコップに移す。
「……シャワーだけでも浴びたい。連れてってくれ」
「…………はい」
「光忠」
「はい」
僕は長谷部くんが口を開くよりも前に、その場で土下座した。
「…………本当にすみませんでした…………!!」
「おい」
「正直調子に乗りすぎた。ここまでやるつもりはなかったんだ。許してくれ」
「…………あのな、光忠」
「あんなにひどくするつもりはなかったんだ。本当だよ」
予想以上に淫語とハートマークと長谷部くんの親和性はヤバかった。淫語とハートマークはヤバイ。ヤバすぎて僕のボキャブラリーがヤバイ。
途中から完全に僕の理性はぶっ飛んでいた。未だに行為中の言動を思い出すと顔から火が出るやら血の気が引くやらで、もはや自分の顔色がわからない。
「自制できないなんて、本当に情けない……!」
なんたる失態。なんたる無様。
いつもなら長谷部くんの些細な仕草にも気を払って、どんなに煽られようと最低限の理性は残してプレイをしていた筈なのに、さっきの僕はどうだ。理性のないただのけだものだ。
頭を畳に擦りつけていると、そっと僕の後頭部に長谷部くんの指が触れる。
「…………光忠、……その、それだけおまえが俺に夢中になってくれたって事だろう。それは、あの、恋人冥利に尽きるというか、うん。正直うれし、」
「僕はもっと君に優しくしたいんだ」
僕の頭を撫でていた長谷部くんの指が一瞬止まる。
「…………そうか」
そう言うと、長谷部くんは僕の髪をくしゃりとやわらかく掴んで、離す。手が離れた感触を不審に思って顔を上げると、長谷部くんはもぞもぞと頭から掛け布団をかぶって横たわるところだった。
「え? 長谷部くん、シャワーは?」
「いい、寝る」
「そのままだとお腹壊すよ?」
「…………」
僕の呼びかけに対し、長谷部くんの目だけが布団の隙間から覗く。何かの妖怪みたいだ。僕達は付喪神だからある意味正しい姿なのかもしれない。
「ほら、連れて行ってあげるから」
そう言って掛け布団にしがみつく体を無理矢理引きずり出して横抱きにする。しばらく居心地悪そうにしていた長谷部くんだったが、僕が立ち上がって歩き出すと観念したように溜息をついた。長谷部くんの腕が僕の首に回って、ぎゅうと抱きついてくる。
「…………光忠、好きだ」
「僕もだよ。今日は無理させてごめんね」
「…………俺も、」
無理させて悪かった、という長谷部くんの呟きは暗い廊下に吸い込まれるようにして消えた。
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