惚れたが負けとは言うけれど・5

惚れたが負けとは言うけれど
     

8004文字

 したいプレイがあるんだ、と言い出されるのにはもう慣れたつもりだった。それでも驚きというものはまだまだ日常に潜んでいるもので。


 その日長谷部くんが取り出して来たのは、黒のボンテージ衣装だった。ぱっくり開いた胸元は細い紐で留められ、丈は臍が見えるくらい。しかも、光沢からして安っぽいエナメルではなくおそらく本革製だろう。
「下もあるんだぞ」
 箱から出したのはやたら丈の短い、ホットパンツと呼んでいい程裾の短いボトムだ。両サイドが開いていて、トップスと同じように紐でいやらしく留められている。
「これをな、こっちと組み合わせるといいと思って」
 新たに出してきたのはセクシーランジェリーの一種だろう。サイドを紐でリボン結びにされたやたら布地の少ない黒レースの下着とガーターベルト、そして同じく黒のニーハイストッキングに真っ赤なピンヒール。
 最近長谷部くんの歪みに歪んだ性癖には余程の事がない限り驚かなくなってしまった僕だが、これは久々に頭がくらくらとしてきて、思わずこめかみを押さえた。

「……ええと、長谷部くん。今日は君が女王様プレイをしたいと、そういう事?」
「は? 着るのはおまえだ」
「え?」

 長谷部くんははあっと溜息をつき、聞き分けの悪い子供に言い聞かせるように一語一語ゆっくりと区切って発音した。
「これを、おまえが、着るんだ」
 一拍の間。

「はああああ!?」
「いわゆる女装攻めというやつだな」
「いや、そんな説明はいらないよ! え、ちょ、待っ、ええ!?」

 意味がわからないしわかりたくない。頼むから待って欲しい。できれば永遠に。
 そんな僕を置き去りにして長谷部くんは手の中の衣装に目を落としながら頬を染めてうっとりと呟いた。

「俺、女の格好をしたおまえに攻められるの、夢だったんだよな……」
「そんな公序良俗に反しまくってる夢は今すぐゴミ箱に捨てよう???」

 しかも女装で定番のメイドとかナースとかじゃなくてボンテージ。それでもってよりにもよって女王様、クイーンだ。しかも僕が。

「待って。本気で待って。これはない。ないってば!」
「少し考えてみろ。衣装以外はいつものソフトなSMでいいんだぞ?」
「ええ…………」

 長谷部くんに言われた通り、少し考えてみる。この装束を抜きにすれば、いつも通り(?)の言葉責めと調教プレイで構わないのだ。むしろここでクスコとかカテーテルとか分娩台とかおむつとか持ち出されなかっただけ傷は浅いのかもしれない――――、

「いや浅くないよ!!!!」
 思わず叫んでしまった。
 一体何の羞恥プレイなんだこれは。今僕は男としてのプライドと長谷部くんへの愛がはちゃめちゃに試されている。
「光忠」
 長谷部くんはがしっと僕の両肩を掴んで顔を覗き込んできた。

「古来、巫女や白拍子……シャーマン達が異性装をする事は性別の境界を超え、己に欠けた陰陽を補い和合を図る事でより神に近づく事を意味していた訳だ」
「…………続けて?」
「俺達は二人とも男性型の神、すなわち陽神で、それに加え五行における属性は金気である事が自明であるからして、その交わりの意味するところは陽の気のさらなる高まりだ。しかし高まりすぎた陽の気は気の乱れにも通ずる。そこでこの辺りで一度陰の気を取り込み陰陽和合を図るというのが相応しいと思うのだが、どうだろう」
「うん、つまり?」
「女装攻めはいいぞ」
「よくないよ!!?」

 わからない。久々に長谷部くんがわからない。
「わかった。俺も腹を括る」
 長谷部くんはうんうんと頷いてすいっと人差し指を一本立てた。
「おまえが女装してくれたら、次の時に俺もおまえの好きな格好をしてやろう」
 一瞬僕の脳内にメイドとかナースとか裸エプロンとかが過ぎった事は墓場まで持っていく秘密の一つに決定した。


 僕は姿見の前に己の姿を映してやるせない気持ちが後から後から込み上げてくるのを必死に堪えた。何が悲しくて自分の似合ってない女装姿など見なければならないのか。
 悔しいことに服のサイズは僕に誂えたようにぴったりだった。考えてみれば長谷部くんは近侍で、僕ら本丸にいる刀剣男士達のデータには好きなだけアクセスできるのだから、スリーサイズや靴のサイズだってきっとばっちり下調べ済みなのだろう。
 紐パンとホットパンツ、ガーターベルトにストッキングという少々心もとない下半身を見下ろして深々と溜息をつき、僕は観念して赤いピンヒールに足を通した。
 鏡の中にはどこからどう見ても立派な変態がいたけれど、こんな変態に犯されたがっている長谷部くんだって大概だ。諦めよう。
 僕はぱちんと頬を叩いて自分に活を入れ、部屋の外で待つ長谷部くんに声をかけた。
「入って」
 すらりと障子が開き、長谷部くんは部屋の中の僕の姿を認めると一瞬目を見開き、ほうっと息を吐いた。

「…………綺麗だ、光忠」

 一度眼科に行った方がいいんじゃないのかなって思ったけれど、言わずにおいた。もうプレイは始まっているのである。スイッチだ。スイッチを切り替えるんだ、僕。
 長谷部くんが後ろ手に障子を閉めて完全に部屋に入ったのを確認すると、僕はにこりと笑ってみせた。

「そうかな?」
「ああ、想像以上だ。すごい。……触っても?」
「いいよ」

 ふらふらと夢遊病者のような浮ついた足取りで長谷部くんが僕に近寄ってくる。そう広い部屋でもないので数歩で僕の元に辿り着き、ぺたぺたと夢中で僕の服や肌に触れる。ストッキングの上からつうっと撫で上げるように指を動かされた時は、くすぐったさと僅かな快感でぞわりと肌が粟立った。
はあはあと荒い息を吐かれて女物の服の上から触られるなど長谷部くん以外からだったら真っ平御免だが、長谷部くんだったら「こんなに興奮しちゃって可愛いなあ」としか思わないのだから僕も結構頭が沸いてるのかもしれない。
「ねえ、長谷部くん」
「ん、なんだ……?」
 とろんとした顔で長谷部くんが僕を見上げる。

「せっかくだから、僕をオカズにオナニーしてみせてよ。今ここで」

 「できるだろう?」と顎の下をくすぐるように撫でると、長谷部くんは頬を赤くしてぺろりと唇を舐めた。紅色の薄い舌が可愛らしい唇と真珠のような歯の隙間から覗く。
 長谷部くんがしゅるりと帯を解く。濃い紫の帯がシーツの上に落ちる。袷が左右に割り開かれ、その下の白い肌が露わになった。ゆっくりと焦らすように袖から腕が抜かれ、用済みになった着物が布団の脇にくしゃりと置かれる。下着だけになった長谷部くんはぺたりとその場に座り込んだ。
「もう乳首勃ってるね。女の子の格好してる僕の事見て興奮しちゃった?」
 やや間を置いてこくりと長谷部くんの形のいい頭が頷いた。
「長谷部くんの変態」
 かあ、と長谷部くんの顔がさらに紅潮し、藤色の瞳が熔けそうに潤んだ。悦んでいる。あの、普段はえっちな事なんて何も知りませんみたいなすまし顔をして皆に厳しく接する長谷部くんが、他ならぬ僕の淫らな言葉に反応して、その性感を開花させている。その事実は僕の独占欲と執着心と、ほんの僅かな嗜虐心を煽るには充分だった。
「……なあ、俺のオナニー、見てて、くれ……」
 ぐりっ。
 僕は下着の上から長谷部くんの股間をピンヒールの爪先で軽く踏みつけた。

「ぁうっっ!」
「『くれ』、じゃなくて『ください』だろう?」

 ぐりぐりと(加減しながら)股間を踏みにじると、そこは既に若干の膨らみを見せていた。

「もしかしてもう気持ちよくなってるの?」
「ち、ちが」
「嘘は良くないよ? だってここ、もうこんなに硬くなってる」

 長谷部くんは唇をはくはくと震わせながら僕を見上げた。

「ごめ、なさ……俺、興奮して、」
「興奮して?」
「おちんちん、かたくしちゃっ、んん、」

 さらに押し潰すように足を動かす。ヒールの爪先を動かす度に長谷部くんのそこは硬さを増していく。

「ほら、ちゃんと僕に言う事あるだろう」
「俺のオナニー、ん、見ててぇ、くださいっ……」
「よくできました」

 そっと股間から足を離すと、長谷部くんはふうと息を吐いてもじもじと下着を下ろし始めた。グレーのボクサータイプの下着の両側に指をかけて脱ぐと、もうすっかり立ち上がった雄芯がぶるんと顔を覗かせる。
「自分で説明しながら弄ってご覧? えっちな君はどんな風にオナニーするのかな?」
 僅かに震える指がそろそろと長谷部くん自身に伸ばされる。
「……最初は、こうして、ん、先の方、くちゅくちゅって、して……」
 長谷部くんの手が、てらてらと先走りを垂らす亀頭を包むように動いていく。水気を含んだ音が脚の間から微かに聞こえる。手のひらが先端を包むと、揉み込むような動きに変わり、長谷部くんの息が荒くなっていく。
「はっ、ぁ、んん、あぅ、皮のとこ、ごしごしって……♡」
 今度は根元から先端近くまで筒状に握った左手が上下に動かされる。

「気持ちいい?」
「ん……きもちぃ♡♡♡みつただ、すご、きもちぃ……♡あ、っは、ン、も、イきそ…♡♡♡」
「ふふ、すっかりトロ顔になっちゃって。本丸のみんなが見たらどう思うかなぁ」
「やっ……」

 長谷部くんが怯えたような顔になって首を左右に振る。意外と彼はこれで露出趣味はあまりないのである。それでも竿を扱く手は止めない辺り、相当なスキモノではあるのだが。

「見られたくない?」
「っぅん、やだ、や、みつただぁ、みつただだけがいいっ……!」
「そう。じゃあ、君がイくところ、ちゃあんと僕に見せてね」

 こくこくと頷きながら、長谷部くんの手の動きが速まる。

「あ――ッ、ん♡っく、んン♡♡♡や、ぁ♡イく、あぁ、イっちゃ……!」
「イく時はなんて言うんだっけ?」
「ふあ、あ、おれぇっ、みつただの、女装姿見て、イきます……っ!」

 宣言通り、びく、びくんと何度か大きく腰を震わせ、長谷部くん自身の先端から白濁が迸った。手のひらだけで受け止めきれなかった精液がぱたぱたとシーツに溢れる。
 はーっはーっと肩を上下させて荒い息をついている長谷部くんの顔の前で、僕は見せつけるようにゆっくりと股間を撫で上げた。レザーの生地の上からでもわかるくらい、そこはもう固く張りつめている。

「ほら、わかる? 君のせいで、ここ、こんなになっちゃった」
「ぁ…………♡」

 長谷部くんの瞳が興奮と期待でとろんと潤む。

「欲しい?」
「ほしっ……くださいっ……!」
「じゃあ、脱がせて。口で」

 長谷部くんは一瞬驚いたように目を見開いたが、次の瞬間には膝立ちになって蕩けた顔で僕の股間に顔を寄せてきた。薄紅色の唇から桃色の舌が伸ばされ、ホットパンツのジッパーに触れる。そのままジッパーの持ち手を舌で持ち上げ、かち、と器用に歯で挟み込み、ジジジと音を立てて下に下ろしていく。途中の布の膨らみで少し難儀しつつも、ジッパーはじりじりと下に動いていった。最後の方で少しだけ僕が手伝ってあげると、下がりきったジッパーの隙間から覗くのは下着の中で張りつめた僕の逸物である。流石に全ては収まりきらず、下着の上から半ば先端が飛び出てはいるものの、伸縮性のないレース生地の下着の中に押し込められた股間は少し痛い。
 けれどそんな光景も長谷部くんの興奮を煽るには充分だったようだ。

「……あ……♡光忠の、おっきぃ……♡♡♡」

 これがエロ同人だったら完全に目がハート型になっているような、発情した雌犬のような顔で長谷部くんが僕の股間をじいっと見つめる。
「欲しい?」
 こくこくと頷かれる。
 僕が焦らすようにゆっくり腰の左右に手をやってホットパンツを下ろすと、漆黒の下着が露わになる。レースの下着と、揃いのガーターベルト。女物のランジェリー姿の僕を見て、長谷部くんの喉がごくりと鳴った。
 完全に脚をホットパンツから抜いてから「長谷部くん」と名前を呼ぶと、彼は僕の意図を察したように片側の腰紐に唇を寄せて吸い付いて引っ張り、しゅるりと解いた。
 反対側も同じように解くと、僕の下半身に残されたのはガーターベルトとストッキング、パンプスだけだった。長谷部くんは爪先からじっくり舐めるように僕の下半身を見つめ、うっとりとした表情で溜息をついた。
「物欲しそうな顔」
 揶揄してやると、長谷部くんは僕を恨めしげに見上げた。

「ん、だって、欲しい……」
「ちゃんと言ってよ。女の子の格好した僕にずこずこされてイきたいって」
「っはぁ……♡俺、女の子の格好の光忠にぃ、ずこずこってハメられて、おちんぽみるくぴゅっぴゅってしたい……♡♡♡」
「…………上手。じゃあ四つん這いになってお尻こっちに向けて」
「……こう、か?」

 すかさず長谷部くんは布団の上に手をつき、こちらにお尻を高く突き上げた状態で四つん這いになる。
 こういうプレイを申し出た時点で準備は済ませてきてあったのだろう、長谷部くんの薄い尻たぶを両手で割り開くと、そこにある小さな蕾は既にローションを溢れさせながらひくひくと動いていた。

「……やらしいね。どんな顔でここ解してたの?」
「ァ、ん、やあ、指、入って……!」
「ああ、もういきなり二本入るね。すっごいトロトロ。そんなに待ちきれなかった?」

 長谷部くんの中はとにかく熱く濡れていて、僕の指にしがみついて離れないようにきゅうきゅうと締め付けてくる。今すぐこのままここに突っ込んでかき回してしまいたい。そんな欲求をどうにか抑えながら、僕はばらばらと中で指を動かした。

「ふああっ、や、指、やだ、」
「嫌なの? どうして?」
「みつ、光忠っ……! みつただの、おっきいのにハメられたいっ……!」
「……もう少しえっちに言える?」
「んっ、みつただのおっきなちんぽにじゅこじゅこってされたいっ……! 前立腺の所、ぐうって押して、かき混ぜて、おれの子宮にどぴゅどぴゅって種付けしてほしいのっ……!!」

 僕はその言葉を聞き終わるか終わらないかの辺りで長谷部くんの腰を掴み、ぐっと挿入した。
「ああああああっ」
 がくりと長谷部くんの腕から力が抜け、お尻だけ高く上げた状態で長谷部くんは僕を受け入れた。
「っ、は、きもちいいね、長谷部くん」
「あっ♡すごっ♡♡♡むり、あっあっ♡♡♡」
「無理なの?」
 ひいひいと喘ぎながら長谷部くんが首を横に振る。
「これ、しゅごい♡♡♡これ、しゅき♡♡♡♡♡」
 どうやらお気に召して貰えたらしい。それでも長谷部くんがハートマークを乱舞させているという事は、まだ余裕があるという証拠なので僕もおちおち気が抜けない。
 僕は先程こっそり用意していた物を手元に引き寄せ、そのまま長谷部くんの脚の間に手を伸ばす。
「んっ、みつただ?」
 長谷部くんが不審がってこちらを振り返るよりも早く、僕はそれを長谷部くんのすっかり復活した性器に被せ、思い切り引き下ろした。

「ぁああッ!? や、あ、なに、」
「オナホールだよ。長谷部くん、前に使ってみたいって言ってただろう?」

 そう、長谷部くん秘蔵のアダルトグッズのうちのひとつ、高級オナホール(未使用)である。まあ、たった今使用済になったけど。

「童貞卒業した気分はどう?」
「ぁ、ンッ、や、あ、だめ、にぎらなっ……!」

 ぐにぐにとシリコン製の筒の上から握ってやれば、長谷部くんはかくかくと腰を動かして泣き喘いだ。おそらく自分でも止められないのだろう。腰の動きと連動するように長谷部くんの中も熱く締め付けてきて、僕の口からも熱い息が漏れる。

「っふ、ぅ、すっごい締め付け……。ねえ、前と後ろどっちが気持ちいい?」
「ふあっ、や、わかんなっ、動かな、で、んんんッ」

 雄と雌、二つの感覚に翻弄されて、長谷部くんが腰を振る。どっちの快楽を追おうとしているのか、最早本人にもわからないのだろう。僕はオナホールを動かす手を止めずに、もう片方の手でがっちりと腰を掴み、ぱんぱんと腰を打ち付けた。
「アッ、は、んっ、や、ぁあ、みつただ、んんんっ、むり、やだ、それ、きもちいい、だめ、」
 枕に顔を埋めながら、長谷部くんの両手がシーツをぎゅうと握りしめる。そんな健気な上半身にも関わらず、長谷部くんの下半身は素直に快楽を追うように振りたくられている。

「ほら、イきなよ。女の子の僕に種付けされながら、オナホに種付けしてご覧。上手にできたらご褒美あげる」

 そう言って僕が腰の動きをさらに強く早くすると、ひっと長谷部くんが鳴いた。
「あっあっあっ、やだ、こわい、みつただ、それ、だめ、あッ、」
 長谷部くんはあまりの快感の為か、嫌だ怖いと泣き始めた。それでもやっぱりへこへこと腰を動かし続けているのだから、体は素直だと思う。

「みつただ、やだ、アッ、は、んん、でる、イく、イっちゃ……!!」
「……ッ、イっていいよっ……」

 きつく締め付けてくるナカの感触を誤魔化すように、がぶりと長谷部くんの項に噛み付いて思い切り腰を打ち付ける。
「ッッッ――――」
 声なき悲鳴をあげながら、長谷部くんがびくびくと体を震わせて僕の持つシリコン製の筒の中へと欲を吐き出す。今夜一番の締め付けに逆らわずに、僕もざりざりと下生えを長谷部くんのお尻へ擦りつけるように中を抉り、彼の奥深くへと白濁を叩きつけた。


「修行したい」
「何の」
「拙僧に山籠りの許可を頂きたく……」
「キャラ変わってるぞ」

 変わりもする。女装してセックスするなんて絶対にありえないと思ってたのに、なんだかんだ今回もまた流されてノリノリのまま長谷部くんを抱いてしまった。まあ喜んでくれたみたいだからいいんだけど。いいんだけど。
 ちなみにもう服はきっちりと脱いで畳み、今はいつもの寝間着に着替えている。あの服が二度と活躍しない事を祈るしかないけれど、どうなんだろう。
 長谷部くんは僕の腕を枕にして、上機嫌そうに目を細めた。
「今夜も最高だった」
「…………ありがとう?」
「ところで、な」
 にんまりと笑いながら長谷部くんが僕の頬をつうっと撫でた。
「『ご褒美』、まだ貰ってないんだが」
 そういえばそんな事言ったっけ。そういうプレイをしている時は割といつもノリで言ってる時が多いのだが、生憎と長谷部くんはしっかり覚えていてきっちり催促してきた。いや、それともこれは彼の事だから全部わかっていて言ってるのだろうか。
「前からしてみたいプレイがもう一個あってな」
 どうしよう。嫌な予感しかしない。

「来月、主が本丸の全員を連れて一泊二日の慰安旅行に行くと仰ってるんだが、流石に本丸を空っぽにする訳にはいかんだろう。誰かが留守居を務める必要がある訳だ」

 どうしよう。なんとなく話の筋がわかってきてしまっている僕がいる。

「そこで、俺とおまえで留守番しようと思うんだ」

 来た来た来た来た。

「この広い本丸で二人きり。つまり、どこでどんなプレイをしようが見咎められる事はない訳だな?」
「やめよう? 厨でセックスとか大浴場でセックスとか、もし実行したら僕この先みんなの前で平静でいられる自信がないよ???」
「それも勿論アリなんだが、違う」
「アリなんだね……」

 ナシであってくれよ頼むから。
 長谷部くんの細くて綺麗な指が僕の顔の前ですいっと一本立てられる。

「俺がやってみたいのは、『本丸お散歩わんわんプレイ』だ」
「ものっっっすごく頭の悪いプレイ名だけどなんとなくわかっちゃうから嫌だなぁ!!!」

 もう何も知らなかったあの頃には戻れないのだろう。僕も順調に長谷部くんの色に染まっている。

「犬耳と尻尾付のアナルバイブと首輪は用意してあるんだ」
「準備良すぎない?」
「なあ、光忠」

 甘くとろけるような声で長谷部くんが僕の名を呼ぶ。

「俺にご褒美くれるんだろう?」
「…………」

 一瞬。一瞬だけ、この得意げな様子の長谷部くんに犬耳と尻尾をつけてとろとろのぐずぐずになるまで抱き潰したら、さぞかし気持ちがいいだろうなぁ、と思ってしまった事は。
 やっぱり、墓場まで持っていく秘密の一つに決定した。

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