惚れたが負けとは言うけれど・7

惚れたが負けとは言うけれど
     

9629文字

 長谷部くんが修行へと旅立ってから今日で四日目になる。

 帰還の時間まではまだもう少しあるけれど、長谷部くんを一番最初に出迎えるのは僕でありたい。その一心で僕は朝からゲートの前で行ったり来たりを繰り返していた。時々貞ちゃんや伽羅ちゃんや鶴さんが差し入れを入れがてら様子を見に来てくれたが、正直何を話したのか覚えてない。我ながら重症だとは思う。

 うちの本丸は最近までバタバタしていた為、長谷部くんの修行は他の本丸よりやや遅い出発だった。
 他の本丸では既に修業を終えて極めた長谷部くん達が帰ってきたらしく、「エロい」「腰が細い」「馬になりたい」などと各本丸の審神者達が噂していると聞く。エロいってなんだ。すごく気になる。腰が細いのは嫌という程知ってる。いつも騎乗位や後背位で腰を掴む時に折れないかどうかひやひやする程なのだ。みんなあの魅惑の腰に今頃気づいたらしい。それはそれで悔しいけど。

 でもそれより何より気になるのは「馬になりたい」だ。どういう事なのか今すぐ説明して欲しい。いくら僕とはいえ、極めた長谷部くんがお馬さんプレイとやらをせがむ女王様に目覚めてしまったら付き合いきれる自身が若干ない。どんな長谷部くんでも愛する自信はあるけれど、それとこれとは話が別だ。
 っていうか、どこの審神者も欲望に素直すぎないだろうか? もっと内面的な所に踏み込んだ感想とか、と思って審神者や刀剣男士達の集まるSNSでこっそり調べようと思ったけれど、野暮な気がしてやめた。それはあくまでも余所の長谷部くんの修行の結果であって、僕の長谷部くんのものではない。主宛てに届けられた手紙だって僕は目を通していない。気を遣った主に読んでみるかと聞かれたけれど、それは長谷部くんが主に宛てたものだからと固辞した。
 修行は、刀によってはつらいものだったりもすると聞く。今頃長谷部くんは悲しい思いなどしていないだろうか。心配だ。不安だ。それでも彼ならどんな試練だって乗り越えてくれるという信頼もある。
 長谷部くんは一体どんな出来事を経験して、どんな風に変わって帰ってくるのだろう。 彼の変化は僕が実際にこの目で、耳で、五感の全てで確かめたかった。それがどんな変化であろうと、僕は長谷部くんを受け入れて愛してみせる(ただしお馬さんプレイは除く)。

 ちなみに、悩みに悩んだ末、例のダイキリくんに相談したら、「僕の長谷部くんが修行でどうなったかって? ふふ、ナイショ♡」と言われたので通信端末の画面に指をめり込ませる勢いで通話をオフにした。聞く相手を完全に間違えた。何たる無様な。


 そうこうしているうちに、ブゥン、とゲートが低い駆動音を立て始めた。
「!!」
「お、長谷部がそろそろ帰還かー」
 後ろから主がこちらへ歩いてくる気配を感じたけれど、僕の視線は光りだしたゲートに縫い止められたままだった。
 光の中に見慣れた人影が見える。最初はモザイクのかかったようなその影は徐々にはっきりとしていって、僕のいとしい恋刀の姿へと変わっていく。
 風に揺れる煤色の髪、真っ直ぐに前を見据える藤色の強い眼差しは変わらず、その装束は大きく変わっていた。
 金ボタンのついたケープ付きの黒いカソック、紫地に金の模様の入った満智羅と腰布。両肩と腰の左右を守る鎧。腰布はコルセットにも似た帯できゅっと閉められ、その細い腰を強調している。金の十字架の模様が入った純白のストラが秋風にたなびく。
 長谷部くんは僕の姿を認めて少しだけ目を細めてから、僕の隣に並んだ主に向かって深々と礼をした。

「へし切長谷部。戻りました。俺の刃はただ、今代の主のためだけにあります」
「ああ、知っているよ。おかえり。よく帰った」

 そう言って主が長谷部くんに近寄って肩を叩くと、長谷部くんはふっと微笑んだ。

「俺が戻ったからには、主に最善の結果をもたらしましょう」
「期待してるぞ」
「はい」

 二人でそんなやり取りをしてから、ようやく長谷部くんが僕の顔を見た。前よりもどことなく鋭さの増した顔つきになった長谷部くんだったが、その顔に浮かぶ笑顔は僕の知っているままだ。

「ただいま、光忠」

 僕は無言で彼の腕を掴んで引き寄せ、ぎゅうと抱きしめた。主がひゅうと口笛を鳴らすのが聞こえたけれど、あえて無視した。

「……おかえり、長谷部くん」

 ああ、今僕の声は震えていなかっただろうか。そんな事を気にする余裕もないまま、僕は長谷部くんの肩に顔を埋めた。長谷部くんの両腕が僕の背中に回る。あやすように彼の手が僕の背中を優しく撫でる。
 たった四日離れていただけなのに、とても懐かしい長谷部くんの香りがした。


 長谷部くん帰還の連絡はすぐに本丸中に伝達され、すぐに宴が始まった。準備とは言っても、昨日から既にあらかた料理は仕込んであったし、大広間の飾り付けも本丸のみんなが張り切ってしてくれたので、あとは軽く料理の仕上げをして運ぶだけだ。メニューには長谷部くんの好きな甘い卵焼きもきちんと入れてある。長谷部くんが帰還して一番に食べるのは僕の料理であってほしくて、僕は張り切ってひたすら卵を割り、混ぜ、焼いて、巻いた。一日置いて味の染みた筑前煮も大鍋いっぱいに用意してある。他の料理はさすがに僕だけでは手が回らなくて歌仙くんや堀川くんに手伝ってもらったけれど、それでも大半は僕の作と言っていい。

「配膳は僕達がやるから、君は長谷部の側にいてやるといい」

 そんな歌仙くんのありがたい申し出を受け入れ、僕は宴の間ずっと長谷部くんの隣にいた。いたとはいっても、長谷部くんは宴の主役なので、あちこちに呼ばれたり代わる代わるに酒を注ぎに来られたりして、殆ど二人で話す隙なんてなかったけれど、時折皆の目を盗むように畳の上でそっと手袋越しに手を握られて、僕の胸はまるで付き合いたての頃、初めて手を繋いだ時のように高鳴った。


 宴が思いの外早くお開きになったのは、皆からの配慮もあったのだろう。僕は早々に長谷部くんと二人、本丸の離れにある自室に戻って、後ろ手にすらりと障子を閉めた。
 長谷部くんは手慣れた様子で座布団を出し、部屋の隅のポットでお茶を入れて僕に湯呑みを差し出してきた。

「飲むか?」
「……いただくよ」

 そうして二人して並んで窓の外の月を見ながら、お茶を啜る。りい、りいと鳴く虫の音と、互いの呼吸音だけが部屋の中に響く。
 僕は一呼吸置いて、ようやく口を開いた。

「その……どうだった?」
「どうだったって、何が」
「修行」

 一言告げると、ああ、と長谷部くんは一つ頷いた。

「織田信長に会ってきた」

 ひゅっと僕の喉が鳴る。やはり、という思いと、それじゃあ、という思いが同時に沸き起こる。
 そんな僕の思いとは裏腹に、長谷部くんはからからと愉快げに笑ってみせた。

「俺を大事にしていたから、機嫌を取る為にわざわざ如水様に送ったのだと直接聞いてきたぞ。個人的に気にはなってたからな。すっきりした」
「……それで、君は……?」
「何が」
「あの、平気なの?」
「? ああ」
「……その、信長公への恨みとか、葛藤とか、そういうのは……」
「そんな事を気にしていたのか、おまえは」

 呆れたように溜息をついて、長谷部くんは首をゆるく振った。

「あのな、散々おまえが言ってきたんだぞ。『君は素敵だ』『世界一綺麗だ』『大好きだよ』『絶対に離さない』と」
「…………言ったし今もそう思ってるけど」
「だからな。『俺』はその辺は『どうでもよくなった』」

 かたり、と卓に湯呑みが置かれる。

「どうでもよくなったというと少々語弊があるが、殆ど気にならなくなった。主に近侍として日々重用されて、俺を一番だと言ってくれるおまえがいて。俺は俺の価値を認める事ができた。だから、そうだな。今回の修行は俺にとって、喉に刺さった小骨取り程度の物だったな。……強いて言うなら、」
「言うなら?」
「…………側におまえがいないのは、寂しかった」

 なんだかじんわりと熱くなってくる目頭を隠すように、僕は愛しい恋刀の体を抱き寄せて、その髪に顔を寄せた。
「……僕も寂しかった」
 素直にそう告げると、長谷部くんが困ったように吐息だけで笑うのがわかった。

「おかえり。君が無事帰ってきて、すごく嬉しいよ」
「……光忠、」

 互いに吸い寄せられるように唇を重ねる。
 そのまま角度を変えて何度も唇を食み、舌を絡めていると、黒い袖が光忠の首に回される。

「……ん、ちゅ、……なあ、」
「……なあに?」
「極めた俺の体、さっそく堪能したくないか? この体、実質処女だぞ? ん?」

 そう言って艶然と微笑む長谷部くんを見て、僕は深く深く息をついた。
 長谷部くんの瞳は既に期待で潤んでいる。以前よりもこころなしか精悍になった顔つきがとろりと蕩けて僕を見つめるさまは可愛い。可愛いよ認める!
 だけど、でも、それにしたって。さあ。
「……長谷部くん、」
 僕は長谷部くんの両肩に手を置いてその瞳をまっすぐに覗き込んだ。

「今日くらい! 普通に! しようよ!! ムードってものがあるだろう!!?」

 さらに文句を言おうとすると、僕の開きかけた唇に白手袋に包まれた人差し指が立てられる。

「なあ、いいだろう? 俺の処女まんこ、おまえのデカマラで躾け直してくれ♡」

 はあーっと僕はもう一度深く深く溜息をついた。
 ああ、長谷部くん。君って刀は、そういう奴だ。知ってる。知ってた。
 修行を経ても、君の本質は何一つ変わらない。それに僅かな呆れと、そこを大きく上回る安堵といとおしさを覚える。
 だから、そう。僕はきっと「いつも通り」こう言うべきなのだろう。

「『躾け直してくれ』、じゃなくて、『ください』だろう?」

 途端に長谷部くんの瞳が来る快楽への予感でどろりと溶けた。

「っ……♡俺の処女まんこ、光忠のおっきいので躾け直してください♡♡♡」
「よくできました」

 嬉しげにぎゅうと抱き付いてくる背中を撫でてやりながら、僕は思う。
 ところでこの服どうやって脱がせばいいんだろう?


 僕の一番の心配事は、湯上がりの長谷部くんが前開きのケープ(ペレグリナというらしい)と黒いカソック姿で現れた事で解決した。

「待たせたな」
「ううん、全然。……武装解除するとそうなるんだね。前のも良かったけど、本当に神父みたいだ」

 以前の前開きのカソックも良かったけれど、ボタン付のカソックは、これはこれで脱がす楽しみがありそうだ。
「寝間着より、こっちの方が犯し甲斐があるだろう?」
 にんまりと笑ってそう言う長谷部くんは、なんというか、本当に平常運転だ。
 僕は苦笑しながら長谷部くんのふくらはぎをスラックス越しに撫でた。

「ソックスガーターはつけたまま?」
「そこはおまえの目で確かめてくれ」
「じゃあそうさせてもらおうかな。……ね、下脱いで見せてよ」

 長谷部くんは頬を紅潮させてこくりと頷くと、立ち上がったままスラックスのボタンに手をかけ、ジジ、とジッパーを下ろしていく。グレーのローライズボクサーの前は既に兆しているのが布越しでもわかる。

「もう興奮しちゃったの?」
「……ん、だって、久しぶり、だから」

 僕にとってはたったの四日だったけれど、長谷部くんにとってはきっと何日も、もしかしたら何年も経っていたのかもしれない。

「修行中、一人で処理したりしてた?」
「…………ああ」
「どんな風にしてたか、見せて?」

 長谷部くんは一瞬だけ恥ずかしそうにきゅっと唇を噛みしめると、そのままスラックスから脚を抜いた。
 しなやかに引き締まったふくらはぎには、やはり見慣れたソックスガーターが着けられている。えっちだ。
 グレーのローライズボクサーの前は僅かに膨らんでいて、長谷部くんは舌で唇をぺろりと舐めながら挑発的に僕を見つめる。背筋にぞくぞくと震えが走った。ああ、早くあの長谷部くんを組み敷いてもう駄目だと音を上げてしまうまでどろどろに犯してしまいたい。そんな欲求に駆られてしまう。
 長谷部くんが白い絹の手袋を口に食んでゆっくりと外す。細いけれどしっかりした男の指が、少しだけ色の変わった灰色の布地越しに、こんもりと膨らんだ芯の形をなぞるように動く。は、と桃色の唇から吐息が漏れた。
「やらしいね。そんな風に誰かに見せつけながらシてたの?」
 勿論長谷部くんがそんな事をしないと知っていて聞いた。一種の様式美である。

「してない……!」
「本当? 長谷部くんは見られてるだけでそんな風に感じちゃう変態さんだから、信用できないなぁ」
「光忠だけ、光忠だけだからっ……」

 いじわる、と長谷部くんが唇を尖らせて呟く。好きなくせに。僕はそう返して笑う。

「まあいいや。続きを頼むよ」
「っ……」

 そんなやりとりをしながら長谷部くんはそろそろと下着を下ろしていく。下半身から靴下とソックスガーター以外の全ての布が取り払われた頃には、半端に立ち上がった雄芯がゆらゆらと彼の脚の間で揺れていた。
 下のボタンをいくつか外しただけの、きっちりと着込まれたカソックの裾の合せ目から、長谷部くんの性器が見え隠れするさまは非常に性的だった。

「それで? えっちな君はどうやってオナニーしたのかな?」

 問いかけると、長谷部くんは無言でぷちぷちとカソックのボタンを外していく。下から現れたのは白いローマンカラーのついたシャツで、そのシャツのボタンも一つずつ丁寧に外していく。
 現れたのは以前よりもしっかりと筋肉のついた上半身で、はだけた胸元から手を差し入れ、長谷部くんは己の両胸をくりくりと弄り始めた。

「……んん、最初は、乳首、いじって、っ……ふ、」

 最初は乳輪をくすぐるように、次第に乳首を揉むようにして強く刺激を与えていくやり方は、僕がいつもやる手順だった。そんな所にも僕の影響を感じてしまって、胸の中で優越感と支配欲が満たされる。
 こんなえっちで、いやらしくて、健気な長谷部くんの姿は、正真正銘この世で唯一人、僕しか知らないのだ。

「乳首だけ? えっちな長谷部くんは乳首弄っただけでイッちゃうの?」

 ふるふると首を振って、長谷部くんは焦らすような動きで徐々にその手を下に下ろしていく。くっきりと割れた腹筋から、可愛らしいおへそを通って、先程から頼りなく揺れる性器へと。

「ここ、おちんちん、しゅっしゅって」
「ふぅん?」

 目を細めてそのまま見ていてあげると、長谷部くんは震える手で性器を握る。左手で根元と陰嚢をゆるゆると刺激し、右手で時折亀頭をぐりぐりしながら竿の部分を上下に扱きだした。
「っぁ、ふ、んん、あ、みつただっ」
 長谷部くんの先端からは白いものの混じった先走りがひっきりなしに漏れて、彼の手の中でぬちゅぬちゅと音を立てている。

「みつただぁ、や、あ、きもちぃっ、みつ、んんんっ」
「そうやっていつも僕の名前呼んでたの?」
「う、んっ」

 こくこくと頷きつつも長谷部くんの手は止まらない。

「後ろは? 長谷部くん、前だけじゃ満足できないだろう?」
「………………からっ」
「うん?」
「おれの、穴はっ光忠の、だからっ」

 その時の僕の気持ちをなんと表現したらいいのだろう。
 ふにゃふにゃに蕩けてしまう程甘やかしてしまいたいような、喉元に牙を立ててずたずたに引き裂いてしまいたいような。相反する衝動を胸に収めながら、僕は長谷部くんに手を差し伸べた。

「おいで」

 不思議そうな顔をした長谷部くんが四つん這いになってこちらへ這ってくる。

「おしりこっちに向けて。後ろは僕が手伝ってあげようね」
「あっ」

 以前よりも短くなったカソックのスリットを捲り上げ、長谷部くんの形のいいおしりを軽く撫でるだけで、気持ちの良さそうな声が上がる。イきそうになったのか、性器の根元を掴んだ手にぎゅうと力が入っているのが見えた。
 一応風呂場で軽く準備はしてきたらしく、長谷部くんの慎ましやかな蕾は緩く口を開けてローションらしき液体で濡れていた。指を差し込んでみると、たしかに以前よりきつく、押し出されるような感触がする。

「長谷部くん、もっと力緩めて。深呼吸してご覧」
「……ん、」

 すう、はあ、すう、と息が吸われる瞬間を狙いながら少しずつ中指を押し込んでいく。

「あ、光忠の指、きたぁっ……!」
「やっぱりきついね。感度はどうなってるのかな?」
「ひああぁあっっ」

 いつものように長谷部くんの好きな前立腺をぐうっと押してあげると、長谷部くんの体重を支えていた右手から力が抜ける。
 腰だけ高く上げるような格好をして、彼の白い喉からひんひんと悲鳴じみた喘ぎが漏れた。
「あっ光忠、ぁん、だめ、そこっ、むり、」
 感度は良好なようだ。

「長谷部くん、ここ大好きだっただろう? 忘れちゃった?」
「んんんっ」

 ぐりぐりとさらに押し込むように指を動かすと、無意識なのだろう、長谷部くんは中心から手を離してシーツをぎゅっと掴んで快感を逃していた。

「駄目だよ、長谷部くん。僕にちゃんとオナニーしてる所見せて」
「ああっ、や、ほんとに、無理、んんっ、そこ、いじっちゃやらぁ……!」

 僕は溜息をついてみせて、長谷部くんの手をシーツから引き剥がすと、その手の甲に己の掌を重ね、長谷部くんの脚の間に導いた。

「ほら、長谷部くんはやればできる子だもんね? しこしこってしてみせて?」
「あ、ぁう……、」

 緩慢な動きで長谷部くんの手が自慰を再開する。僕もそれに応じるように長谷部くんに挿れていた指の本数を増やす。体は処女でも長谷部くんの体はたしかに快楽の追い方を知っている。僕は焦らずにじっくりと長谷部くんのお腹に二本の指を挿入し、中のしこりを挟むようにして動かした。
「あ、らめ、ん、ふぁっ、光忠、みつただぁっ……!」
 もう快感で何がどうなっているかわからないのだろう。長谷部くんは必死に己の物を扱きながら、腰を時折ひくつかせて泣き喘ぐばかりだった。
「も、イく、出る、でちゃ、ああぁああぁっ!」
 綺麗に筋肉のついた背中を反らしながら、長谷部くんはその可愛らしい先端から白濁を吐き出してびくびくと体を震わせた。
 白濁の散った黒のカソックの、その仕立てのいい布地を指でつつっとなぞって僕は囁いた。

「長谷部くん、こんなお偉い神父様みたいな格好して、僕に処女まんこ指でぬこぬこされてイッちゃったの?」
「ぅ、ひぁ、ごめ、なさっ……」
「堪え性のない悪い子だねぇ」
「ん、違っ、これは、久しぶりだったからぁ…! や、かきまぜないでぇ……!」

 再びぬちゅ、と指を二本入れてぐちゅぐちゅと掻き回すと、長谷部くんの萎えていたモノがゆっくりと立ち上がっていく。

「まだ僕の入れてないだろう? 君の淫乱処女まんこ、ちゃんと躾けてあげようね♡」
「っふ、ぁ、ああん、や、ああっ、ん、みつただ、おねがいっ」

 入れていた指を三本に増やしてずこず事抜き差しすると、長谷部くんが哀願するように僕の名前を呼んだので一度手を止めて顔を覗き込んだ。藤色の瞳が涙を含んでゆらゆらと揺らめいている。

「どうしたの?」
「…………顔が、見たい。頼む」

 いつもだったらさらに焦らしてあげる所だったのだけれど、僕だって久しぶりで余裕なんてない。低く唸りながら長谷部くんの体をくるりとひっくり返して仰向けにすると、膝裏を掴んで大きく脚を広げさせた。
「…………挿れるよ」
「ぅんっ……きてっ……!」
 前をくつろげて既に完勃ちのペニスを取り出して、長谷部くんのぬかるんだ後膣に押し付ける。慣らしはしたけれど「初めて」の体は勿論それだけじゃ入らなくて、僕は空いているもう片方の手で自身を支えて長谷部くんの中にずちゅりと腰を進めた。
「っく、」
「あっ♡あ、みつただ、みつただが、きてるっ♡♡ねっ、ちゅう、ちゅうして♡♡♡」

 長谷部くんが嬉しげに声をあげて両腕を僕に伸ばしてキスをせがんでくる。長谷部くんにとってこの体勢はつらいだろうけど、僕はリクエスト通り体を前に倒して長谷部くんの薄い唇に吸い付く。体勢を変えた拍子に中のイイ所に当たったのだろう、長谷部くんが合わせた唇の隙間から「んん、っっふ、」とくぐもった声をあげる。
 舌を絡めて歯を立てて。ちょっと痛いくらいの方が長谷部くんは好みだ。中が馴染んできたのを見計らって同時に腰を使い出すと長谷部くんの引き締まった腹筋が隆起した。

「ん、ちゅ、っ、ふあっ♡みつただ、ね、きもちぃ?」
「……すっごく、気持ちいい。熱くて狭くて吸い付いてくるみたいで、君は本当に名器だ、ねっ!」

 ずん、と奥を突くように一際強く腰を打ち込めば、長谷部くんはその白い喉を反らせて首を左右に振った。ぱさぱさと汗で濡れた髪がシーツを打つ。

「ひゃああっあ! 俺も、おれも、きもちぃっ♡みつただ、すき、すきぃ……っ!」
「僕も好き。愛してるよ、長谷部くん……!」

 そう言うと、長谷部くんの中がきゅんきゅんと締め付けてくるのがわかった。

「あはっ。好きって言われて感じちゃった? 処女なのに長谷部くんってば本当にえっちだね」
「あ、んあっ、うん、俺、えっちなの♡♡♡光忠限定の処女オナホだからぁっ♡出してっ♡♡♡俺の中に光忠の精液どぴゅどぴゅしてっ♡♡♡」

 そう言うと長谷部くんの中が本当に搾り取るようにうねって僕のものに吸い付くものだから、僕は思わず低く呻いて腰の動きを激しくした。

「あ、あ、ぁあっ、っ♡♡♡や、んんっ、みつただ、みつただぁっ……!!」
「はあっ、出すよ……! 僕の子種でたっぷり孕ませてあげるからねっ!」
「んん♡きて、おれにいっぱいたねつけしてぇ♡♡♡」

 歯を食いしばりながら長谷部くんの奥の奥に腰を打ち付けて、込み上げてくる射精感に逆らわず思い切り精を放った。
「ああっ♡あついのきてるっ♡♡♡や、イく♡♡♡イッちゃ……!」
 一瞬遅れて長谷部くんが二度目の射精をする。お互い強烈な快感に暫しはあはあと荒い息をつきながら見つめ合う。キスしたいな、と互いに思ったのが伝わって、濃厚なくちづけを交わす。
 しばらく舌を吸い合って名残惜しく思いながら唇を離すと、長谷部くんが唾液でべたべたの口元を拭いながら僕を挑戦的に見上げてきた。
「……っはあ……なあ、まだ終わりじゃないんだろう?」
 勿論、と僕は返した。

「ちゃあんとここが僕の形に馴染むまで躾けてあげるよ」


 あれから明け方近くまで体を重ねて、互いに出るものも出なくなった頃、泥の中に沈むような眠りについた。
 僕が髪に触れられる感触に目を覚まして隣を見ると、いつの間にか長谷部くんは目を開けていて、僕の髪をやわらかく梳いていた。慈愛に満ちた眼差しに僕の胸がときりと跳ねる。

「…………おはよう。どうしたの?」
「いや……朝起きて、隣におまえがいるのはいいものだな、と」

 その言葉に僕の胸がきゅうっと締め付けられた。
 僕にとっての四日間、長谷部くんは一体幾つの朝と夜を独りで過ごしたのだろう。その時、彼はどんな想いだったのだろう。
 僕は腕の中の長谷部くんをぎゅっと抱きしめた。

「長谷部くん、大好きだよ。絶対に離さない」
「ああ。離したら地獄の底まで追いかけて斬ってやる」

 そうして唇を交わし、僕らは額を合わせながらくすくすと笑いあった。
「……さて、これからまた一から俺の事調教してくれるんだろうな?」
 にやり、と。長谷部くんが笑う。爽やかな朝に似つかわしくない、いやらしい笑みだった。

 僕は苦笑して、長谷部くんの顎にそっと手をかけると、了承の意味を込めて再びくちづけを贈った。


 ドMで変態で淫乱で、それでも純粋でまっすぐな、僕のいとしいいとしい恋刀。
 ちょっと前の僕ならSMなんて考えた事もなかったけれど、僕もすっかり染まってしまったものだ。思えば遠くに来たものである。転がり続けているアブノーマルの崖の底はまだまだ見える様子がない。
 それでも、彼と一緒なら落ち続けるのも悪くないと思ってしまうのだから。
 まさに惚れたが負け、というやつである。

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!
     
タイトルとURLをコピーしました