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激しいのがお好き
「あっ、ん、みつただぁっ」
「っう、くっ…………」
僕の手の中で長谷部くんの屹立がびくびくと震え白濁を吐き出す。きつくなる締め付けに逆らわず、僕も長谷部くんの中に精を注ぎ込んだ。
はあはあと荒い息を吐きながら、長谷部くんが僕の汗で濡れた髪をやわらかく梳く。
「ん、光忠……気持ちよかったか?」
「うん、ありがとう」
頷いて長谷部くんの額に軽く口付ける。くすぐったそうに首をすくめて長谷部くんがくすくすと笑う。調子に乗ってそのまま鼻筋まで唇を下ろし、長谷部くんの薄い唇をちゅうと啄むと唇の隙間から迎え入れるように舌が動き、僕はそれに逆らわずに長谷部くんの口内へお邪魔する。
歯列をなぞり上顎のやわらかい部分を舐めてやると、くふんと鼻に抜ける声で長谷部くんが喘ぐ。
「……好きだよ」
「ああ。俺も」
そう言ってお互い簡単な身繕いをして、抱き合いながら眠りにつく。
付き合って、こうして体を重ねるようになって三ヶ月。不満はない。けど、もう少し刺激が欲しいかなあ、なんて思ってしまうこれは、俗に言うマンネリ化ってやつなんだろうか。
◆ ◆ ◆ ◆
「長谷部! 光忠! ちょっと来てくれ!」
主が血相を変えてそう言ってきたのは、そんなある日のことだった。
僕は内番を抜け出して遠征帰りの長谷部くんと主と共に執務室へと向かう。
「本丸のゲートが故障してこいつが来たんだ」
そう言って主が障子を開けるとそこには――――燭台切光忠がいた。
僕と長谷部くんは驚きで息を呑む。
ただの燭台切光忠ならなにも驚くことはない。演練で余所の本丸の僕に会うということは珍しくないし、本体の刀だけであれば厚樫山にでも出陣すれば比較的容易に手に入る。
僕達が驚いたのは、その燭台切光忠から漂う神気が僕と全く同じ――主である審神者の霊力も含め――だったことである。
二振り目、と思うにはあまりにも余裕がある風格の彼はこちらを見てにこりと笑った。
「やあ、初々しいな。こんにちは、僕と長谷部くん」
そんな風に微笑む彼を前に絶句している僕たちに、主はこう言った。
「驚くなよ。こいつは、三年後のうちの本丸から来た燭台切光忠だ」
主の説明ではこういうことらしい。
本丸のゲートの故障で、うちの本丸と三年後のうちの本丸が繋がってしまい、ちょうど遠征に向かう途中の三年後の僕がこちらにやって来てしまった。だから、そこにいるのは三年後の僕で間違いないと。
「政府の説明によれば、これは歴史改変にはあたらず、正史だということだ。一晩経てば元に戻れるそうだから、おまえ達面倒を見てやってくれないか」
「僕からもお願いするよ。僕の記憶では僕は長谷部くんと未来の僕の世話係をしていたから、君たちもそうしてくれないか」
正しい歴史のために、と付け足されれば僕と長谷部くんには断る理由が存在しなかった。
「……ええと、み、おまえは緑茶でいいか」
「『燭台切』でいいよ。長谷部くん」
未来への影響を最小限に押さえるため、誰にも見つからないよう僕と長谷部くんで最新の注意を払って僕達の部屋へと連れて帰ってお茶を出すと、三年後の僕はそう言っておかしそうに肩を震わせた。
「さっきも言ったけど、本当に初々しいね。三年前の自分達がこうだったなんて信じられないな」
燭台切くんは懐かしそうに目を細め、長谷部くんの淹れたお茶を美味しそうにごくりと飲み下す。
「……その、聞きづらいんだけど、三年後の僕達って……」
「元気だし順調だよ。おかげさまで」
僕はほっと胸を撫で下ろす。別れる心配をしていたわけではなかったけれど、三年後も健在で仲良くやれているというならこれほど安心なことはない。
そんな僕を見て燭台切くんはにやりと笑う。
「もしかしたら嘘かもしれないけどね?」
「それはない」
断言したのは長谷部くんだった。
「俺も光忠も折れないし折れさせない。それに俺はこの先こいつを離してやるつもりがないからな」
「長谷部くん……」
恋人の素晴らしさを改めて噛み締めていると、燭台切くんはそれでこそ長谷部くん、と嬉しそうに破顔した。
「でも、最近あっちの方はマンネリ化している頃だろう?」
「なっ……!」
長谷部くんの顔に朱が差す。僕も絶句してまるで別の生き物のような未来の自分を見る。燭台切くんは笑みをたたえてゆっくりと組んだ手の上に顎を乗せる。
「突っ込んで出してキスしておわり。満足なセックスライフを送れてないんじゃない?」
「俺は満足してる!」
「長谷部くん、中イキはしたことある? 僕ので喉奥まで攻められたことは? 奥の奥、結腸まで僕のを受け入れたことはある?」
長谷部くんが真っ赤になって瀕死の金魚のように口をパクパクさせた。見かねて僕が口を挟む。
「っ……そんなの、君に関係」
「あるだろう。僕なんだから」
君も君だよ、と呆れたように言われる。
「長谷部くんの感じやすさに胡座をかいて性感帯の開発を怠っていたりしない? もっと隅から隅まで可愛がってあげないと。ドライでイッた長谷部くんはそりゃあ可愛いんだから」
「……君、」
かあっと頬が熱くなる。僕の努力が足りないせいか、言われた通りたしかに長谷部くんはまだ中だけで達したことはなかった。いつも僕がイキそうになる時に長谷部くんのものを一緒に扱いて終えていたのをまるで見透かすように――実際見透かされているのだが――、言われて耳が痛い。
「ああ、安心して。僕はそのためにここにいるんだ」
どういうことかと長谷部くんと二人して目の前の彼を見つめると、燭台切くんはこう言った。
「僕は三年前、三年後から来た僕に長谷部くんの可愛がり方を教わったんだ。今度は君たちの番だよ」
それが正史だ、と言われれば、やはり僕達に断る理由は非常に残念ながら存在しなかった。
「…………なあ、本当にやるのか」
湯浴みを終え長谷部くんと僕の部屋に三人分の布団を敷いて、寝間着姿になった状態で長谷部くんがそんなことを言った。
「やらないと歴史改変になってしまうねえ」
燭台切くんの言葉にぐぬぬ、と長谷部くんが歯噛みする。燭台切くんの言動を見て思うんだけど、本当に僕は三年後こんな風に意地悪になっているんだろうか。時の流れって怖い。
「まずは二人でいつも通りしてくれて構わないよ」
そう言われて僕らはおずおずと互いに手を伸ばし、唇を重ねる。長谷部くんの薄い唇を割り開いて舌を入れ、歯列をなぞって緊張で奥に縮こまった舌を手繰り寄せる。
「んん、っふ、ちゅ、んぁっ」
他人だけど他人じゃない。そんな相手に見られながらキスをして、長谷部くんが恥ずかしがりながらもいつもより感じていることが反応からありありとわかった。
長谷部くんの緊張を解すように後頭部に手を伸ばし撫でてやると、少しずつ長谷部くんが落ち着いてくる。僕は反対の腕で長谷部くんの帯を解き、着物をはだけさせていく。
「ん、みつた、らっ、んんっ……!」
もういいか、と唇を離せば、僕と長谷部くんの間につうっと銀糸が橋渡され、ぷつんと切れる。
「光忠……」
長谷部くんは下着を履いてなかった。どうせするからと湯浴みの後わざわざ履かなかったのだろう。そういうところが潔くて、えっちでかわいい。
「長谷部くん」
名前を呼びながら軽く口付け、唇を滑らせて首筋、胸へと下ろしていく。
燭台切くんはその間座っている長谷部くんの後ろに回って腰を下ろした。少々居心地の悪いものを感じながら、僕は長谷部くんの既に芯を持ち始めている中心に触れる。やわやわと揉みしだくと素直に形を変えていくそこに顔を近づけ舌を伸ばす。
ちろちろと舌でくすぐるように舐めると長谷部くんが腰を揺らした。
「長谷部くんはすこし焦らされるほうが好きだから、先の方は時々掠めてあげるだけにして……そう、上手」
僕と同じ声がそう僕に指示を出して、僕の手であって僕の手ではないそれが長谷部くんの脇腹をするりと撫でた。
「ひうっ……!?」
長谷部くんがびくりと背中をしならせる。
「長谷部くんはここも弱いからね」
「んっ、ひぁっ、やめ、くすぐったい……!」
「やめてあげない」
そのまま反対の手で燭台切くんは長谷部くんの乳首をきゅうとつまみ上げる。
「覚えて、長谷部くん。これは気持ちいいことなんだよ」
燭台切くんは後ろから長谷部くんのことを抱きしめ、その白く丸みを帯びた耳朶にかりりと歯を立てた。
「長谷部くん、はじめて君と夏祭りに行った日を覚えている?」
「……それ、は」
「君は僕の選んだ桔梗の浴衣を着て、顕現してはじめて見る花火に目を輝かせてた。僕はそんな君から目が離せなくて、ちっとも花火なんか見てなかった。帰りに君に花火の感想を尋ねられてすごく困ったっけ。怒る君に『長谷部くんがあんまり綺麗だったから』って言ったら君ってば顔真っ赤にして俯いちゃってさ。可愛かったなあ」
長谷部くんと僕は同時に息を呑んだ。それは、たしかに僕達の大切な思い出であった。
「信じてくれる? 僕がちゃんと『光忠』だってこと」
長谷部くんの肩からふっと力が抜ける。
「みつ、ただ」
「そうだよ。三年前の長谷部くん」
黒革の手袋を着けた手が優しく長谷部くんの髪を梳く。
「ねえ、長谷部くん。大好きだよ」
そう言って燭台切くんが長谷部くんの頬に口付けた。長谷部くんはとろんとした瞳で燭台切くんを見つめている。
僕はなんだかそのやりとりが悔しくて、腹いせ混じりに長谷部くんの屹立を先端から口内に加えて吸い上げた。
「んああっ……!」
口の中で浮き出た血管や裏筋を舌でなぞるのは長谷部くんの好きなやり方だ。僕だって長谷部くんのイイ所くらい、知っている。三年後の僕には敵わないかもしれないけれど。
「あっ出ちゃ、出ちゃうっ光忠っ」
「ストップ。長谷部くんも僕も」
ちゅぽんと長谷部くんのものから口を離して上を見れば、燭台切くんの苦笑の篭った視線とぶつかった。
「まだ夜は長いんだから、今イかせちゃうと後がつらいよ? 長谷部くんはもうすこし我慢。ね?」
「……ん……」
長谷部くんは喉元をさわさわと撫でられながらこくこくと頷く。その姿にも若干の嫉妬心が沸き起こるが、僕達の今後のために必死に押さえつけた。これも全部長谷部くんを気持ちよくしてあげるためだ。それと忘れてはいけない、正しい歴史のため。
僕は長谷部くんの膝を掴んで太腿をつうっと舌で舐めていき、奥に秘された穴の縁をなぞるように舌を動かす。時々焦らすように中に押し入るような動きをすれば、長谷部くんの腰がたまらないというように突き出されてかわいい。
「あっんんっ……はあっ」
僕の頭上では燭台切くんが長谷部くんの乳首を両手でくりくりといじっている。乳輪をぐるっと撫で回したかと思えば時々強めにきゅうとつままれて、その意図しない動きはたしかに長谷部くんをとろかすには最適らしい。長谷部くんは唇の端から唾液を垂らして、今まで見たこともない顔で感じ入っていた。
もっともっと、長谷部くんのことを気持ちよくしてあげたい。僕しか知らない淫らな顔を見てみたい。すぐにでも挿入して、泣きわめく長谷部くんを組み敷いて喘がせてやりたい。
「まだだよ」
僕の思考を読んだかのように燭台切くんが口を開いた。
「長谷部くんも『僕』も、まだまだこんなものじゃあない」
だろう?と自信たっぷりに問われれば頷くしかない。
僕は枕元に置いてあった丁字油を手のひらに出してあたため、会陰まで流れ落ちた長谷部くんの精液と絡めるようにしてつぷりと後穴へと指を侵入させる。
「うあっあっ」
長谷部くんの中はいつもより熱かった。熱くて狭くて、本当にここに僕のものが入るのだろうかと毎回不安になる。けれど人体とは存外柔軟なもので、長谷部くんは健気にも僕のものを毎度毎度きちんと受け入れてくれる。
長谷部くんが気持ちよくなるように、穴の縁を舐めながら指を動かしていく。
「んんんっっ」
ちょうど燭台切くんが長谷部くんの乳首をつまんだらしく、穴の中がきゅうと縮まる。
「長谷部くん、もうすこしゆるめて」
「や、無理、だっ…………!」
「じゃあ乳首はすこしおあずけにしておこうか」
燭台切くんはまたさわさわと長谷部くんの脇腹やへそのあたりを撫で上げることにしたらしい。長谷部くんがはあ、と熱い溜息をつくと、燭台切くんはくすりと笑って長谷部くんに頬ずりした。
「……物欲しそうな顔。早く入れさせてあげたいけど、まだ我慢だよ」
そんなこと僕にだってわかっている。
僕は一本、もう一本と指を増やして長谷部くんの穴をたっぷりと可愛がってやる。ばらばらに動かしたり、長谷部くんの大好きな前立腺の所を捏ねてやったり。その度に長谷部くんはびくびくと震え、股間のものからは絶えず白濁が流れ落ちる。
「あっ、や――ほし、ほしい、光忠っ」
「だぁめ。まだちゃんとほぐれてないだろう?」
「なんで、おれ、やだ、ほしっ……」
「大丈夫。ちゃんとあげるから。いい子だから、長谷部くん」
ぐすぐすと長谷部くんが泣き出すのを燭台切くんがなだめながら、こちらにちらりと視線を寄越す。僕はその視線の意味を理解して、二本の指で中のしこりをぐうっと押した。
「あ、だめ、イっちゃ、イっちゃうっ……!」
長谷部くんが白い喉を晒しながら痙攣して精液を撒き散らす。白濁がぱたぱたとシーツの上に溢れた。
「ほら、上手に中イキできたね、長谷部くん」
いい子いい子と燭台切くんが放心した顔の長谷部くんの頭を撫でる。
「……ん、おれ、いいこ…………?」
「うん、いい子だよ。いい子。次はドライでイこうね」
容赦がない。だけど長谷部くんは本当に気持ちよさそうで、いつもならここで小休止を取るところを、僕はそのまま長谷部くんの脚を掴んで開くと、自分のペニスを長谷部くんのアナルにぬぷっと先端だけ埋め込んだ。
「ひゃっあ……! みつた、まって、俺まだイッたばっかりでっ……!」
「「待たないよ」」
声は同時だった。視線だけ燭台切くんに動かせばそれでいいとばかりに微笑まれて若干ばつが悪い。
先ほど指を入れた時も思ったけれど、長谷部くんの中はいつもよりあつくてきゅうきゅうときつく締め付けてくる。これは、気を抜けば僕も危ない。だけど、二人の前でかっこわるい所は見せられない。僕は唇をぺろりと舐めた。
「うごく、よっ……!」
そう言って腰を引いて、突き入れる。それだけの動きでも長谷部くんは嬌声をあげてびくびくと震える。
「ひああっっ」
いつの間にか燭台切くんが右手で乳首をいじり、左手で長谷部くんのものを掴んで堰き止めていた。
「あっやら、はなして、みつただっ、あっ、んああっ」
「今僕は君の『光忠』じゃないから聞いてあげられないなぁ」
ごめんね、と笑って燭台切くんが長谷部くんの頬にキスをする。僕はそれを振り払うように腰を突き入れたりぐりりと押し込むように回したり。その度に長谷部くんは全身を快楽に震えさせた。
「あっ、あっ、ひ、ん、ああっ、やああっ」
「ね、僕。ちょっとそのまま座ってみて」
言われた通り繋がったままゆっくり後ろに座ると、燭台切くんが長谷部くんを抱えながら僕ににこりと僕に笑いかけた。
「長谷部くんの奥、虐めてあげて? すっごいから」
そう言ってぱっと手が離されるのと同時、僕は長谷部くんの腰を掴んで思いきり腰を打ち付けた。
「あああああああああっっ」
――――それはものすごい衝撃だった。
長谷部くんの奥の奥、行き止まりだと思っていた場所を先端で切り開く。噂では知っていた場所だったけれど、そこを攻めるのははじめてだった。以前長谷部くんが怖いとこぼしたことがあったからだ。今、僕はそこを攻めている。
「んあ、ひあっあああっ」
先端が肉の輪でちゅうちゅうと吸い付かれているような感触で思わず腰が震える。ぐぽぐぽと音が立ちそうなくらい激しく抜き差しすれば、目の前にぱちぱちと白い星が弾けて消えた。
「やら、こわい、なにか、クる、光忠、みつただぁっ」
長谷部くんがぼろぼろと泣き出す。泣かせたいわけではなかったけれど、ああ泣き顔もかわいいなあなんて欲の方が先に立ってしまう。
「大丈夫、長谷部くん、ここにいるよ」
涙を唇で拭ってやって、彼を絶頂まで導くために僕は長谷部くんの腰に添えた手に力を込める。
引き寄せて打ち付けて。ぐりっと長谷部くんの一番深いところまで侵入する。
「んああああああっ!!」
「っく……!」
ぎゅうっと中が収縮する。僕はその締め付けに逆らわず、長谷部くんの腹の中に欲の限りを吐き出した。
「っは、はあ、はっ…………」
互いの腹の間には白濁が飛び散った様子はなく、長谷部くんはどうやらちゃんとドライでイけたようだった。
「えらいね、長谷部くん。ちゃんと空イキできたね」
「……みつただ……」
長谷部くんが名前を呼んでこてんとこちらに凭れかかってくる。
「キスしてあげて。長谷部くんドライでイクといつも口寂しくなるみたいだから」
僕は言われるがままに長谷部くんの唇に口付ける。僕の舌をちゅうちゅうと甘えるように吸う長谷部くんに、僕はなんだかたまらなくなってその薄い体を掻き抱く。
「長谷部くん、大好きだよ……」
「ん、おれも、すき」
そう言って微笑んだ長谷部くんの顔が、今まで見た中で一番かわいかったことは僕だけの秘密だ。
「もう行っちゃうのかい?」
翌朝、調整された本丸のゲートの前で僕は主と長谷部くんと一緒に燭台切くんを見送りに立っていた。
「ああ。君たちのおかげで楽しかったよ。主も、僕も長谷部くんもありがとう」
そうかそうかと顔を綻ばせている主の隣で僕と長谷部くんは昨晩のことを思い出してゆるく視線を泳がせた。
「……三年後の長谷部くんと仲良くね」
三年後の長谷部くんにも会ってみたかったが、それは三年後のお楽しみというやつだろう。僕の長谷部くんがこれからどうなっていくかを隣で見守っていくのは恋人である僕の特権である。
「ああ、勿論。そうだ、長谷部くん」
燭台切くんは長谷部くんを手招きして何やら耳打ちをする。何か言われた瞬間長谷部くんの頬がさっと赤くなったのを僕は見逃さなかった。
そのままこそこそと何かやり取りしているのを見てどんな話をしているのか今すぐ問い詰めたい気分だったが、主の前なのでぐっと我慢をする。主は暢気に「長谷部と燭台切はやっぱり仲がいいなあ」なんて呟いている。断言するが絶対に主の思っているような可愛らしい内容では、ない。
長谷部くんが燭台切から身を離し、こちらへと戻ってきた。僕はさりげなく肩を抱いて長谷部くんを引き寄せる。燭台切くんはそれを見て呆れたように口を開く。
「もう少し余裕を持ちなよ、僕」
「長谷部くんの前では格好なんて気にしてられなくなるんだ」
僕の答えに長谷部くんはすこし顔を赤くし、燭台切くんは目を細めて微笑んだ。
「……懐かしいなあ。この会話を、僕も三年前にしたんだった。あの時は君の立場で」
そう言って燭台切くんはくるりと踵を返しゲートへと向かう。
「じゃあ、これでさようならだね。バイバイ」
背中を向けて手を振る燭台切くんの姿はゲートの光に包まれて、やがて消えていった。
「さっき燭台切くんに何言われたの?」
主と別れて自室に戻る途中、僕は長谷部くんに気になっていたことを尋ねた。藤色の視線があちらこちらに動き、あーとかうーとか唸りつつも、僕が名前を呼ぶと観念したように長谷部くんは口を開いた。
「……たまには、俺から奉仕してやれと」
びっくりしてぽかんと口を開ける僕を八センチ下から長谷部くんが見上げてどこか挑戦的に笑う。
「今夜、覚悟しておけよ」
――――今夜も刺激的な夜になりそうだ。
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