11605文字(全2ページ合計)
3年後のおはなし
僕が無事自分の時間軸の本丸に戻り、主への報告を終えて自室に戻ろうとした時。右手側の障子が不意にひとりでに開き、中から白い腕がにょっきり生えて僕の首に絡みつくとそのまま部屋の中に引きずり込んだ。
こんなことをするのは決まっている。
「長谷部くん?」
「おかえり、光忠」
「ただいま」
そう言って首をひねってキスをしてやると、長谷部くんはどこか不満そうに唇を尖らせた。
「随分楽しんできたようだな」
「君が覚えている以上のことはしていないよ」
「…………気に食わない」
そう言って長谷部くんが僕のネクタイの結び目に手をかけ、するりと抜き去る。
「今日は俺の好きにさせてもらうぞ」
そう言って艶然と笑うものだから、僕は早々に抵抗を諦めて恋人のなすがままに押し倒されてあげた。
今日の長谷部くんの趣向は拘束プレイらしく、僕は早々にネクタイで後ろ手に手首を縛られた。
「んんっ……ちゅ、ふ、あっあっ、んんっ」
長谷部くんは僕の脚の間に顔を埋めて、ぴちゃぴちゃと水音を立てながら僕のペニスを丹念に舐め上げ、空いた手で後ろを解している。
裏筋をれろっと舐め上げられて思わず溜息をこぼすと、長谷部くんは満足げに口の端を上げた。
「どうだ?」
「わかってるくせに……ん、気持ちいい、よ」
この三年で僕のイイところを知り尽くした舌が僕のものを這っていく快感は筆舌に尽くし難い。
いつもの癖で頭を撫でてあげようとして、ぎちりと手首が鳴る。そういえば僕は拘束されているのだった。縛られていると長谷部くんの頭を撫でてあげられないのが残念だ。
「んちゅ、はっ」
「長谷部くん、手のほうがお留守になってるよ」
長谷部くんはじとっとした目で僕をちらりと見つめると、わかってるとばかりに先端にじゅうと吸い付いた。
「っく……」
思わず呻くと長谷部くんはしてやったりという顔で僕を見上げて笑う。その弓張月の唇に噛み付いてやりたいと思ったものの手がこれでは思うように動けない。
再びぺろぺろと陰茎に舌を這わせる長谷部くんは、今日はとことん僕を焦らすつもりのようだった。
「……長谷部くん、ちゃんとお尻いじれてる?」
「ん、むっ」
「お尻の方、寂しくなってきただろう? 僕がいつもやってるみたいにやってごらん。最初は浅いところのしこりを押すみたいにして」
「ふっ、ぁ、あっ」
「上手上手。お口の方もちゃんと使ってね」
後ろの刺激に夢中になって上の口の方がお留守になっていることを指摘すると、長谷部くんは悔しげに眉を寄せ、再び僕のものに唇を寄せる。
「しこりを押してあげるともっともっとって中が蠢くの、わかる? 熱くて硬くて太いものが欲しいってきゅんきゅんしてくるだろう?」
「っ、く、んっ……は、あっ」
長谷部くんの指がぐちぐちと己の入り口を出入りし、その度に彼の口から熱いため息がこぼれる。
本当なら僕が思い切りかき回してあげたいところだったけど、せっかく長谷部くんがこういう趣向で来たのだから僕も乗ってあげることにする。
「ほら、ちゃんと銜えて。指も動かして。まだまだこんなものじゃないだろう、長谷部くん?」
負けず嫌いの彼のことをそう煽ってやると、とろんと溶けていた藤色の瞳に光が戻る。快感に喘ぎつつも、僕のものに必死で舌を這わせる長谷部くんの姿は健気でかわいい。
「んちゅ、ふっ……ッ」
長谷部くんが僕のものを口いっぱいに頬張り、上下に扱き始めた。じゅぽじゅぽと下品な音を立てて吸い付かれれば、腰から背筋にかけてじんとした甘い痺れが駆け抜ける。快楽に脳髄が白く染まるが、ここで屈するわけにはいかない。
「ほら、長谷部くん。もっと舌を絡めて。先の方を抉るように動かして……ん、ぁ、いい子、だね、」
鈴口をほじるような動きをされて息が詰まる。
「長谷部くん、出すよっ……」
腰を動かして喉奥に擦りつけるようにすると、長谷部くんは軽くえずきながらも動きを止めずに僕のものに吸いつく。
「っ、ぅ、あっ」
こみ上げる欲望に逆らわずにそのまま口の中に吐き出すと、長谷部くんは何回か喉を動かして僕の出したものを飲み干した。
「……ね、口開けて見せて」
長谷部くんは僕に見せつけるように口を開き、その中の赤い舌をゆっくりと動かした。わずかに舌の上に残った白濁がとてもいやらしい。思わず唇を舐めると長谷部くんが伸び上がって僕に口付けた。自分の精の味に一瞬顔をしかめると、長谷部くんはどこか楽しげにさらに舌を絡めてくる。趣味が悪い。しかし長谷部くんの弱い所なら僕は熟知している。
「んんっぁ、ふ、」
ひらひらとした薄い舌を絡め取って吸い付いてやると、長谷部くんの腰がびくりと震えた。逃げを打つ舌を捕まえて引き出して。口付けを終える頃には長谷部くんの顔はもうすっかりととろけていた。
「君の好きにするんだろう? ねえ、どうされたい? 硬いので前立腺こねてほしい? それとも奥までごちゅごちゅ突かれたい?」
ご随意にどうぞ、と言うと、長谷部くんは悔しげに舌打ちし、「……見てろよ」と言うが早いが片手でまだ硬度を保っていた僕のものを掴んでゆっくりと腰を落としてくる。
「んあああっ」
「くっ……ん……」
先程まで指で責められていたからか、長谷部くんの穴はさしたる抵抗もなく僕を受け入れた。熱く蠢く体内の感触に感嘆の溜息をつく。
「っは、あ……イイ顔してるじゃないか、光忠」
長谷部くんは快感に眉を寄せながらも、嬉しそうに笑ってちょんと僕の額に口付けてきた。
「言うねえ」
「あ、んんんっ」
ぐいと下から腰を突き動かせば、長谷部くんの顔が甘くとろける。そのまま筋力に任せて突き続けてしまってもよかったのだが、それではつまらない。
「ほら、動いてくれるんだろう?」
「ん…………」
長谷部くんはひとつ深く息をすると、僕の肩に手をかけてゆるゆると動き始めた。
「あ、ひ、ン、ああっ、や、あっ」
時折長谷部くんの動きに逆らったり、わざとタイミングを外したりして腰を動かすと、潤んだ瞳がキッと睨みつけてくるのが本当にかわいい。あやすように腰を使って深く穿つと、その瞳がとろりと溶けるところも含めて。
「ぁ、や、んん、はぁ、」
「ん、かわいい。長谷部くん。すきだよ」
そう言って瞼にキスを落とすと、きゅうと中を締め付けられて息が詰まる。
「っ……あは、感じちゃった?」
「……ん」
素直に頷かれて僕のほうが驚いた。でもすぐにいとおしさが後から後から沸いてきて、僕は長谷部くんの耳に軽く歯を立てながら囁いた。
「ねえ、これ外して?」
「…………でも、」
「君を目一杯愛したいんだ」
そう言うと長谷部くんの視線がわずかに泳いだが、やがて唇を噛み締めて両腕を僕の背中に回すと、ネクタイの結び目に指をかけてしゅるりと解いた。
「……解いたぞ」
「ありがとう」
「ああああ、ッ、んんっ」
お礼に長谷部くんの腰を掴んで彼の好きな所を突いてやると、長谷部くんはその白い喉をさらして悦んだ。
「あ、やら、らめ、あ、あっ、ん~~ッ」
ぴゅく、と長谷部くんの陰茎から精液が迸り僕達の腹を濡らす。ひんひんと鳴いて震える彼の首筋に噛み付いて、さらに奥をこじあけるようにぐりぐりと腰を使うと、長谷部くんは待ってと涙目で訴えてくる。
もちろん僕は待たずに彼のイイところを突き上げる。
「~~~~~~っ!!」
中がぐにぐにとうねって僕のものをもっともっとと欲しがるように動くのに逆らわず、ありったけの精を注ぎ込むと、長谷部くんはびくびくと全身を震わせて空イキした。
「っふ……長谷部くん、大丈夫?」
ずるりと長谷部くんから陰茎を引き抜き、汗で張り付いた髪を剥がしてやると、長谷部くんは僕の肩に顔を埋めて消え入りそうな声で呟いた。
「…………どうだった」
どういうことかと視線で問うと、長谷部くんはどこか不安げに僕を見上げ、口を開く。
「……三年前の俺の方が、良かったか?」
僕は虚を突かれてぽかりと口を開く。
まったく、何を不安がっているのかと思ったら!
僕は僕のいとしいひとを抱き寄せて、安心させるように額に唇を落としてやる。
「三年前の君もそりゃかわいかったけど、僕の長谷部くんは君だけだよ」
三年。三年だ。僕達にすれば瞬きに等しいような時間だけれど、それでも僕達はそれだけの時間を時に笑い、時に泣き共に過ごしてきた。そんな時間を共有してきたのは、他ならぬ目の前の長谷部くんだけだというのに、何を不安がることがあるというのだろう。
肝心な所で自信をなくしがちな可愛い恋人の目をまっすぐに見つめ、僕はこつりと額を合わせる。
「愛してるよ、長谷部くん。君だけを、永遠に」
「……もし他のやつに目移りしたら、折ってやるからな」
「光栄だね」
そう言って僕達は同時に吹き出し、くすくすと笑いあった。
夜の名残が残る部屋で、二人並んで朝を待つ。きっと僕達は何度でも夜を越し朝を迎えるだろう。願わくば来年も再来年もその先も、ずっと。隣にいるのは君であってほしい。
祈るような気持ちで、僕は長谷部くんをぎゅうと抱き寄せ、その可憐な口元に唇を寄せた。
※コメントは最大500文字、5回まで送信できます