【六】
あれから僕たちは形式上もう一度付き合うことになり、ことの経緯を話したら歌仙くんには苦笑され、向こうの燭台切とへし切くんからはおめでとうとシンプルなメッセージが届き、歌仙くんからおおよその事情を聞いたらしい主には「やっぱり燭台切は鈍い」と笑いながら背中をぺしりと叩かれた。解せない。
そうこうして、僕は長谷部くんと庭を散歩していた。まだ日陰に雪の残る冬の庭で、それでもあちらこちらから草花の芽が顔を出す中を二人で手を繋いで歩く。長谷部くんの手は相変わらず冷たかったけれど、外に出てから僕とずっと手を繋いでいるものだから、徐々にだけれどぬくもりを取り戻している。温くなった手の長谷部くんは咲いたばかりの水仙を楽しげに眺めており、それを見つめていると僕のこころは春の日だまりのようにぽかぽかとあたたかくなった。
今度の出陣場所についてだとか、夕飯のおかずだとか、とりとめのないことを話しながら池の橋を渡っていると、不意に長谷部くんが僕の手を引っ張った。
「…………燭台切」
長谷部くんが示した先には、例の咲かずの梅があった。どうしたのかとその指の先を追うと、黒っぽい枝の先に白い花がちょこんと乗っている。ほんの一輪だけだったけれど、そこにはたしかに梅が咲いていた。
「……この木にも、咲くんだな」
「……咲かないのかと思ってた」
二人してそんなことを呟いて顔を見合わせる。
これが満開になって散るころには、春はすぐそこだ。雪が溶けて梅が咲き、桜が舞って春が来る。
春になったら。その時には僕はこの気持ちに名前をつけられているだろうか。僕の心に、恋は宿っているだろうか。
「梅だな」
「梅だね」
「咲いたんだな、やっと」
そうして長谷部くんがふわりと笑う。
僕はなんだかたまらなくなって、長谷部くんの唇をそっと塞いだ。
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