【ゲームブック風小説】いつだって愛してる

短編
     

 

 しかしこんな見知らぬ高級ホテルでルームサービスを頼むのも気が引けたので、大人しく冷蔵庫からサービスらしいミネラルウォーターを取って来てごくりと飲んだ。

 ◆ ◆ ◆

「ただいま。あれ、ルームサービス頼まなかったんだ」
 夜になって光忠が戻ると、部屋の様子を見て意外そうに片眉を上げた。
「……こんなところで図太く食事なんかできるか」
「なら帰る?」
「いや、それはそれで勿体ないだろう」
 そう言うと、光忠はくすくすと笑い声を上げて長谷部をソファの上に押し倒した。
「じゃあ、勿体なくないこと、シようか」
「…………嫌だって言ったって、するんだろ」
「君が嫌ならしないよ。今日はね」
 光忠の首筋からいい匂いがする。嗅いでいると段々と体の芯が蕩けていくような、甘くて懐かしくて刺激的な不思議な匂いだ。これがきっとフェロモンというやつなのだろう。
「でも、全然嫌そうには見えないね」
「……ぁ、う」
 膝で足の間を押されて、長谷部は小さく声を上げた。そこは既に軽く兆していて、そのままぐりぐりと膝を動かされると、奥の雄膣からじゅんと体液が溢れるのがわかった。このオメガという性は、番のアルファにはとことん従順になるよう体ができているらしい。
「っは、んん、みつただ、」
「……お風呂、行こっか」
 ぎゅうと抱き寄せられて、長谷部は静かに頷きを返した。

 ◆ ◆ ◆

「は……」
 あの後散々ホテルで抱かれて、翌日帰宅してからもしつこく求められた。普段から避妊薬を飲んでいるとは言え、それでも妊娠してしまうのでは、と思うくらいの量の精液を注ぎ込まれた。
 体だけはどんどん光忠に慣らされて、今では光忠が入っていないと下腹が疼くような感覚すらする。
 怖い、と思う。体を作り替えられるのも、それに引きずられるように心まで緩んでいくのも。
 長谷部はふうと溜息をついてごろんと寝返りを打った。思いのほか転がってしまい、ぼす、と光忠の枕に顔を突っ込んでしまう。明け方仕事に向かった光忠の残り香を肺いっぱいに吸い込んでしまい、一晩中可愛がられた体が疼くのを感じる。
「…………くそ、」
 さっさと処理をしてしまおうと、下着を脱いで後ろに手を伸ばす。連日の光忠からの責めで、最近の長谷部は前だけではとてもイけない体になっていた。濡れた穴の縁に指をかけると、くちゅりと濡れた音がした。
「はっ……ん、あ、あ……」
 指を鉤状に曲げて前立腺を刺激しながら、光忠の枕に顔を埋める。甘い匂いで脳の奥が痺れるようだ。腰を動かすと、シーツに性器が擦れて気持ちがいい。番の香りを嗅ぎながらへこへこと腰を前後させながら中を刺激していると、今まさに光忠に犯されているような錯覚をしてしまう。

『長谷部くん、かわいい。すごくえっちだよ。もっと指増やせる? そう、上手』
「あ――ッ、んっ、あ、あ、や、イく……!」

 いつか光忠に言われたような言葉が脳裏を過ると、ぱち、と視界が瞬いて瞬く間に長谷部は絶頂した。
 ぜえはあと荒い息をつきながら、ぼんやりとした頭で長谷部は「物足りない」と思った。なんとなく思い立って、光忠がベッドの上に脱いで残していったシャツをたぐり寄せて顔を擦りつける。枕よりも幾分か濃い匂いに陶然としつつ、これだ、と思う。
 ベッドから起き上がってふらふらとクローゼットに近づき、なるべく光忠の香りが濃い服を引っ張り出してベッドへと運んでいく。手袋やシャツ、スラックスに下着。それでもやっぱり物足りなくて、今度は脱衣所のカゴから洗濯前の下着やインナーシャツ、靴下等を掴み取った。今までで一番濃い光忠の匂いにうっとりしながらそれらもベッドへと運ぶ。
 光忠の服を自分の周りに広げると、なんとも言えない安心感があって、長谷部はくふ、と鼻を鳴らした。
 そうして、はた、と我に返る。

「………………え?」

 どうして自分は光忠の服を集めているのだろうか。
 巣作り、という言葉が脳裏を過る。番を持ったオメガは発情期に入ると、番のアルファの持ち物を集めて巣を作るのだと。今の長谷部の行動はまさにその通りではないだろうか。
 かち、と歯が鳴った。ふやけかけた頭からさあっと血の気が引いて冷静な考えが戻ってくる。
 光忠に攫われてから数ヶ月。長谷部の前の発情期は、たしか――、
「…………どう、しよう……」
 光忠は、きっと長谷部が発情期に入ったと知れば、喜んで種付けをするだろう。そんな確信があった。
 逃げなければ、と力の抜けそうになる手足を叱咤して起き上がる。
 服を着替えて、マンションを出ようと玄関に向かったその時、ドアノブがかちゃりと動いた。
「長谷部くん……?」

 ああ、終わった。

 見開かれた隻眼が状況を把握してゆっくりと細められるのを、長谷部は絶望的な気分で見つめていた。

★エンディング1「予感」

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