◆ ◆ ◆
「っは、ぁ、最近、大人しいね。どうしたの」
「ぅあ、あンッ」
ばちゅんと腰を動かされて甘い声が漏れる。思わずひくりと後ろを締めつけると、光忠がぐっと眉根を寄せた。
「べ、つに……だって、俺は、お前のなんだろ」
荒い息を吐きながら出した答えに、光忠は何故かあまり面白くなさそうに「ふうん」と声をあげた。
「従順な君もかわいいけど、前の反抗的な君も好きだったのにな」
「……贅沢な奴だな」
「そうだね。君といるとどんどん欲張りになる」
軽いリップ音を響かせて口づけられる。差し込まれた舌を吸って甘噛みを返すと、くすくすと笑い声が漏れた。
「好きだよ、長谷部くん」
「…………」
俺も、とは返さずに、長谷部は光忠の腰に脚を絡めてゆるりと腰を振ってみせた。
「…………なあ、続き」
「うん、いっぱいシてあげる」
再開された律動にふやけていく頭で、長谷部は自分の荷物の中に隠してあるあの毒薬のことを思った。
光忠は完全に長谷部を信用しているようだった。長谷部がその気になれば、いつだってあれを飲ませて殺すことができる。
自分がこのうつくしい男の命を握っているのだ。そう考えると、ぞくぞくとした昏い喜びが胸の奥を満たしていくのを感じる。
きっと自分は地獄に落ちるだろう、と長谷部は想った。ただ安穏と生きていた数ヶ月前の綺麗な長谷部国重にはもう戻れない。
――いつかきっと、自分は光忠へ毒を盛るだろう。でも、それは今ではない。
誰よりも憎くて哀れな男への想い。それが自分の限界を超えた時、この手で光忠の命を終わらせ、その後で自分もすぐに後を追う。いつかこの男と心中するために、長谷部は生きることを決めた。それは長谷部なりのけじめのつけ方だった。
「……みつただ、」
「うん、僕はここだよ。長谷部くん」
安心させるように握ってきた手を、すこしだけ握り返す。
いつか来る終わりの日に想いを馳せながら、長谷部は襲い来る悦楽に身を任せていった。
★エンディング3「囚われたのは」
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